記念日の過ごし方

【数週間ぶりの再会】

そして迎えた7月4日。

国民の祝日、独立記念日である。


家の前に飾られた星条旗。

庭先にはバーベキューセットが用意されている。



「今年のソースには自信がありますよ。楽しみにしていて下さいね。」



バーベキューデイとも言えるこの日の為に作り上げたソースだ。

たくさん食べてもらおうと意気込むシャスタ。



「楽しみだけど、まずはパレードね。行くわよ!ワシントンへ!」



ロサンゼルスの自宅でそんな事を言うシルビア。

ワシントンまでは端から端までの距離があるのだが──



「一瞬で移動できるって最高よね。パパ達が神になって良かったわー。」



60歳間近のソフィアが笑っていた。



「母さん、少し遅れて行っても構いませんか?」



「いいけど、何で遅れるの?」



「ファネットがまだなんです。手紙に時間は書いたんですが……」



と、そこへ来客を告げるチャイムが鳴った。

顔を見合わせたアレックスとマティアスが玄関へと走る。


勢い良く開けたドアの前には、ビクッと身を引いたウェスティが立っていた。

がっかりするアレックスと、満面の笑みを浮かべるマティアス。



「遅かったじゃねぇか!つーか、逢いたかったぞこの野郎!」



「わあっ、いきなり抱きつくな!離せよマティアス!」



暴れるウェスティにため息をつく。



「少しぐらい良いじゃねぇか……。逢いたくて堪んなかったんだぞ、お前に……。」



耳元に囁かれたウェスティが真っ赤になる。

人前で抱き締められるのは恥ずかしいが、マティアスの温もりが心地良かった。



「あ、あの、」



ウェスティの後ろから聞こえた声。

その存在に気づいたマティアスが赤くなる。

思いっきりデレた顔を見られていたのだ。



「は、はは、い、いらっしゃい、ファネット……」



その台詞を聞いたアレックスが、固まる二人を押し退け外に出た。

ちょこんと立つファネットを見て笑顔を見せる。



「いらっしゃい、ファネット。逢えて嬉しいです。」



「私も逢えて嬉しい……。あの、可愛いお花をありがとう。すごく嬉しかったわ。」



微笑んで見上げられ、愛しさが爆発する。

それでも何とか自分を抑え、そっとファネットを抱き締めた。



「喜んでくれて俺も嬉しい……。はは、ほんと……逢いたかった……。」



抱き締められたファネットも、同じ思いでいたと頷いていた。



「遅いと思ったらイチャついてたのね。そろそろ出発したいんだけど、別行動にする?」



様子を見に来たシルビアが笑っていた。



「いや、別行動は夜にする。朝から暴走したらマズいだろ?」



「夜だって困るよ!暴走するなら帰る!」



「だあっ、だから!暴走しないように慣らすんだって!」



まずは家族と一緒に過ごし、ウェスティの存在に慣れる事。

お見合いの日を教訓に、2人きりになっても暴走しないようにと考えたのだ。



「ウェスティ、マティアスが暴走したらいつでも逃げなさいね。あ、でも、流されちゃっても良いわよ?」



ニッと笑うシルビアに赤くなる。



「そ、それは嫌だ。流されて関係を持つのだけは絶対嫌だよ。」



「分かってるって。今日は逢うの二回めだし、少しは余裕もあるから大丈夫だ。」



「どの口がそんな事を言うんだか……。」



うっと言葉につまり、苦笑するマティアス。

前科がある為言い返せない。



「パパの忍耐強さを見習う事ね。アレックスはどうするの?」



「一緒に行きますよ。ファネットに下界に慣れてもらうんです。」



いずれは共に暮らす下界だ。

疎いままでは不便だろうと、アレックスなりに考えたプランである。



「じゃあ出発するわよ。いざ!ワシントンへ!」



テンションMAXなナイト一家が民族大移動をする。

この日はアメリカ市民が盛大に楽しむ祝日なのだ。

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