第2話
僕には高校時代から好きな女の子がいた。
すごく美人というわけではないし、男子には少し当たりのキツい部分もある子だったが、席が隣になってからは少しずつ話すようになり、次第に仲の良い友達たちには愛嬌があり、優しい子だという事がわかっていった。
音楽の趣味や好きな漫画、会話のなかの笑いのツボなど、驚くほど共通点が多かった。僕はそんな彼女に徐々に惹かれていったし、彼女も僕にはいつも笑顔をみせてくれるようになっていった。
卒業を間近に控えた時期には彼女に告白もした。彼女と一番仲良い男子は自分だという自信はあったのだが、どうやら彼女にとって僕は仲の良い、かけがえのない「友達」だったらしい。
推薦で一流大学への進学を決めていた彼女と、その後一浪が確定した僕の接点はそこで無くなるはずだった。
だかしかし、残酷なことに彼女から僕への友情は、僕の告白をもってしても途切れることはなかった。浪人中も僕の進学後も、あの映画が気になるとか、あのアーティストのCDを貸してほしいとか、お互いに様々理由をつけては、数カ月に一度会っていた。
果たして男女の友情というものは、僕がひたすらに我慢をすれば成立することが証明されたのだ。
お互いに社会人になってからも僕たちのなんともいえない関係は続く。時には一緒に酒を飲むこともあった。
彼女には彼氏がいるときもあったようだが、僕から敢えてそのことを聞くことは無かった。彼女の方も、僕が気持ちを押し殺しているのを知ってか知らずか、恋人についての話をすることは殆ど無かった。
僕はというと、彼女を諦めるためにも短期間だが恋人をつくっていた事もあるし、それなりに女性と2人で出掛けることもあった。だが無意識に彼女と比べてしまうのか、あまり執心することもなく、下手に手を出すようなこともしなかった。
そんな僕に皆安心するのか、次第に兄の様に慕われ、恋人のことや進路の事など様々相談してくるようになった。僕が皆からいい人と言われるようになったのはこの頃からだった。
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