第4話 視線の記録:大学生Bの最後の三日間

【1日目/深夜 0:22】


なんとなく眠れなくて、布団の中でTwitterをいじっていた。


「都市伝説」とか「怖いSNS」とか、そういうタグを辿っていくのが最近の暇つぶしだ。


その中で、やけにリツイートもいいねも少ないのに、スクショだけが出回ってる謎アカウントがあった。


「@n0_follower_girl」 目のどアップがアイコン。


モノクロで、瞳孔だけが異常にリアル。


怖いけど、怖くない。


フォロー:0

フォロワー:0

投稿数:数千件


よくあるネタだと思って、ついアカウントを開いてしまった。


ツイートは全部同じような文面が続く。


「みてる」

「そっち みてる」

「うしろ みてる」


深夜のテンションってやつかもしれないが、怖さより先に笑ってしまった。


誰もフォローしてない、フォロワーもいない。


「なんだこの自己満アカウントは?」


ノリでフォローししたら、すぐにフォローバックが帰ってきた。


面白半分で「マジで見てんの?」ってDM送ってみた。


【2日目/朝】


目覚めたら、スマホの通知が異常だった。


Twitterの通知欄に「@n0_follower_girlさんがあなたのツイートをいいねしました」って並んでる。


何を「いいね」されたか確認すると…俺の寝顔の画像だ。


俺は、そんなツイートしてないし、カメラロールにも何もない。


いや、それどころか、この寝顔、明らかに今朝の俺なんだよ。


昨日の夜の着てたTシャツの柄が、写真と完全一致している。


どうやって、撮ったんだ? 部屋中を見回すが、特に異常はなかった。


気持ち悪くなって、DMも消そうとしたが…開けない。


ブロックボタンもグレーアウトしてる。


なんだこれ?バグか?


とにかく不気味だったから、Twitterをアンインストールした。


なんとなく視線を感じる。


バイトも休みにして、一日中、スマホの電源も切って過ごした。


【2日目/夜】


夜食を買いにコンビニ行った帰り、ポストを確認したら入ってた。


モノクロの目の写真。


折らずに、まっすぐのまま投函されていた。


印刷された紙じゃない。


銀塩っぽい、昔の現像写真の様な紙質だった。


写ってるのは、あのアカウントのアイコンと同じ「目」。


差出人も何もない。封筒もない。


近くの交番に持って行って相談したが「いたずらかもね」で片づけられた。


管理人にも言って、監視カメラを確認してもらったが、「誰も映ってなかった」って言われた。


俺はその夜は、カーテンも閉め切って、鍵も閉めても


部屋の電気は消せなかった。


そして、音楽をかけながら無理やり眠った。


目を閉じたままでも、視線を感じる。


【3日目/昼】


大学に行って、友人にから「@n0_follower_girl」の話をされた。


本当は話したくなかったけど、DM送った事や、モノクロの目の写真の話をした。


怖くて限界だった。


俺はもう、スマホを手放せなくなっていた。


トイレでも食堂でも、何かから逃げるみたいにずっと画面を見てた。


あのアイコンがどこかに現れる気がして。


ネットを切っても、Bluetoothを切っても、電源を落としても関係ない。


「壁に映る影が目に見える」なんて話、誰も信じないと思う。


でも、トイレの個室にいたとき、目の高さに黒い影が浮かんでいた。


ただの照明の加減、目の錯覚・・・そう思い込みたかった。


でも、その「影の目」は俺をずーと見ていた気がする。


【3日目/夜】


もう、逃げられないかもしれない。


今、家に帰って来たけど、玄関の前で固まっている。


ドアのポストの隙間から、また見えてるんだ。


目の写真。


今度は、カラーで、赤い光が瞳に反射してる。


俺が今この瞬間、スマホのライトをつけたせいだ。


つまりこれは、今撮られた写真ってこと?。


ドアを開ける勇気がない。


でも、誰かに伝えたくて、このメモを残してる。


もしかしたら、これを読むのは友人、お前かもしれない。


もし俺がいなくなっても、探さないでくれ。


そして「@n0_follower_girl」には、かかわるな。


もう、後ろから視線を感じている。


音もしないのに、気配だけが濃くなってきてる。


ドアじゃない。


今はもう、俺の背後から視線を感じる。


「みてる」


さっき、スマホの通知が来た。


Twitterは消したはずなのに。


「@n0_follower_girlがあなたをタグ付けしました」


写真付きで投稿されていた。


俺が、今、固まって震えている姿を映した画像だ。


もう、ダメだ・・・・


(この記録は、消息を絶ったBの部屋に残されていた

 スマホのメモ帳に記録されていたものを再構成したものです。)

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