第3話 K先生の記録
都内の私立高校で現代文を教えているKと申します。
教員歴15年近くになります。
これから、私が体験したお話をします。
この話を信じてくれとは言いません。
ただ、これを読んで、何かがおかしいと感じたのなら、すぐにSNSをやめてください。
これは都市伝説でも怪談でもなく、実際に私が経験した記録です。
2023年の春の事です。
新学期の準備で職員室に籠っていたある日、3年生の女子生徒・Aが相談に来来ました。
A「先生、ちょっと見てほしいTwitterのアカウントがあるんですけど……」
スマホを差し出してきた。
画面を見せられると、目のドアップのモノクロ写真がアイコンになっている、異様なアカウントが表示されていた。
@n0_follower_girl
フォロー:0
フォロワー:0
ツイート数:数千件以上
内容はすべて短文。
「みてる」
「あなたの後ろ」
「まど、しめた?」
「つぎは だれ?」
見た瞬間、鳥肌が立った。
と言うのも、数日前、自分も同じような内容のアカウントを偶然検索していたからだ。
その時は一瞥しただけで流したが、どこか記憶に引っかかっていた。
私「何かあったのか?」
と訊くと、Aはおそるおそるスマホを操作し、ある画像を見せてきた。
それは、窓越しに彼女が眠っている写真だった。
場所は、自宅のベッドで、本人は、まったく記憶にないらしい・・・明らかに盗撮?。
しかも、その投稿が「@n0_follower_girl」のアカウントからされていたというのだ。
A「カーテンも閉めてたし、鍵もちゃんと閉めていました。」
A「ネットでは、特定されない様に、誰にも家の場所も教えてないのに」
意味もなく、背筋に悪寒が走る。
私「「@n0_follower_girl」って、誰か心当たりがあるの?」
A「全然知りません。」
A[この間、SNSを検索していたら、たまたま引っかかって・・・」
私「親や警察に相談した?」
A「お母さんに話したら、お母さんが警察に相談しました。」
A「でも、いたずらの可能性が高いって、まともに取り合ってもらえなくて・・・」
取敢えずスマホをAに返して
私「暫く様子を見て、それでも続く様なら、今度は、先生が警察に言ってあげる」
私「そしてSNSも暫くやらない様に」と話した。
その日の放課後、私は職員室で一人、例のアカウントを再度確認してみた。
すると、「@n0_follower_girl」の投稿に写真が一枚投稿されていた。
見覚えのある画像だ、事務所の様な場所で背を向けて写る一人の男性の写真
よくよく見ると、その写真は、職員室に居る私の後ろ姿だった。
それも、職員室の机に座っているところを、窓の外から撮られたようなアングル。
「@n0_follower_girl」は、この学校に居るのか? 生徒の誰かなのか?・・・疑問だけが残った。
それから3日後、Aは学校を欠席した。
母親から電話があり、「昨夜から連絡が取れない」との事。
部屋に異常はなく、スマホだけが机の上に置かれていたそうだ。
そして、彼女のスマホ画面には、Twitterの通知がひとつ。
「@n0_follower_girlがあなたをタグ付けしました」
警察が動いたが、手がかりは一切なかったそうだ。
私もひどく動揺していたが、教師としての責任感もあり、冷静を保とうと努めた。
だがその夜、私のスマホにも通知が届いた。
「@n0_follower_girlさんがあなたのツイートにいいねしました」
ツイート? 私はTwitterをやっていない。
調べてみると、過去に連携させたまま放置していた古いアカウントにログインされていた。
そこには見覚えのない投稿が。
「今日も、みてた。」
「つぎは あなたの番。」
いいね:1
そのアカウント名が、「@n0_follower_girl」
訳が分からなかった、なぜ私のアカウントに?
それ以降、私は、怪異を経験することになる。
自宅のパソコンは、Wi-Fiは切っても切っても勝手に復活するし、パソコンを起動するたびに例のアカウントが自動で開かれる。
メールやSNSのパスワードが勝手に変わり、写真フォルダには見覚えのない画像が次々に追加されて行った。
いずれも、私の寝顔や、風呂場の鏡越しの写真、窓の外から撮られたものだった。
極めつけは、自分の授業中の様子を後方から録画した動画映像。
盗撮を疑い、家や教室内を探したが監視カメラなどは見つからなかった。
だが、その動画は鮮明で、何者かが教室の後ろから私を見ている構図だった。
同僚Cにも相談したが、まったく信じてもらえなかった。
C「生徒の失踪で、ストレスが溜まってるんじゃないか?」
C「最近休んでないじゃない?少し休んだら?」
そんなこと言われてしました。
でも、あれは現実に起きている事なのに・・・
ある晩、職員室に一人で残っていると、背後からふと視線を感じた。
振り向いても誰もいない。
しかし、職員室のホワイトボードには見覚えのない落書きがあった。
「K先生、みてるよ」
ぞっとした。
すると静まり返った職員室に、スマホの通知音が響いた。
スマホを見ると、1件の通知があった。
「@n0_follower_girlさんが写真を投稿しました。」
添付された写真は、ホワイトボードの落書きと、私がそれを見つめている後ろ姿
私はもう逃げられないと思った。
私は、理由も告げず学校に退職届を出し、携帯も解約し、インターネットのない山間の実家に移り住んだ。
最初の数日は平穏だった。
電波も入らない、テレビもない。
ただ静かな自然だけがある。
だがある朝、郵便受けに一枚の写真が入っていた。
それは、私が昨夜寝ていた部屋の写真だった。
窓の隅に、ひとつの“黒い瞳”だけが浮かんでいる。
あの目だ。
Twitterのアイコンに使われていた、あの“目”だけの女。
「ネットを絶っても、見てくる」
私は今、こうしてネットカフェでこの文章を打っている。
誰にも届かなくてもいい、せめて、記録として残しておきたかった。
もしあなたが、この話をネタとして面白がって検索したなら、すぐにやめてください。
「@n0_follower_girl」
その名を、すぐに忘れてください。
最後に、私が見た最後の通知を書き残しておきます。
「@n0_follower_girlさんが写真を投稿しました」
添付された画像は、この文章を打っている、今の私の姿
パソコンのWebカメラのランプが光っている。
この画面の向こうから、誰かが見ている。
あなたのスマホにも、通知が届いていないか?
画面のどこかに、黒い瞳が映っていないか?
もし、今あなたが「何かの気配」を感じたなら・・・
もう、見られているのかもしれません。
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