長い旅の終わり

俺は病院のベッドで目覚める。


あれ?寝てるのは彼女じゃなかったっけ?


無精ひげだらけの顔だ、こんなんじゃ彼女に笑われるな。


あれ?


ベッドから起きようとしたら少し視界が斜めになっている。


まるで長いことベッドから起きてなかったかのようにふらついている。




ふらつきながら歩く俺の前に見慣れた顔がいる。


130年をかけて救った恋人だった。


最初は信じられないような表情だった、数秒間の沈黙があっただろう。次第に涙ぐみ、ぐしゃぐしゃな顔になる。


俺「よお」


俺「ひでぇ表情だな」


恋人「うあ」


次の瞬間、彼女の柔らかい身体が俺をしかと抱きしめる。


恋人「うわあああああああああああああああああああん!!!!!」


まるで赤子の様に俺にしがみつき、泣きじゃくる。





ああ……





この瞬間のために、おれはあの地獄の5日間、130年間を繰り返したんだ。


俺「もう5日限定じゃないな」


恋人「うぐっ!えぐっ!ずっと!ずっと待ってた!!!」


俺「ああ、待たせたな」



俺「これからは、一緒の時を過ごすんだ」


俺「どちらの記憶も、世界も、置いていかないみんな一緒の5日間を」


彼女は俺にしがみつき、こくこくと頷く。



5日間ボタン。



あのボタンは、俺たちがこれから過ごす無限の5日間をくれるために俺たちの下に現れたのかもしれない。そして、いずれまたどこかの古本屋で、誰か必要とする物の前に現れるのだろう。



俺たちは、抱き合いながら病室にさす優しい春の光に照らされていた。



<了>

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5日間ボタン 中の人(カクヨムのすがた) @NakanoHito_55

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