第4話 深夜3時のチンポジ問題

 夜勤明けって、寝ても寝てもなんでこんなに眠いんだろう。


我ながら自分の体の不思議さに感じいりながら、オカンに

「ちょっと行ってきます。」

と伝えて、おタケさんの店へ。


どうも、こんばんは。

「あら、今日は早いわね。」

カウンターに座ると、おしぼりとビール。

本日のお通しはポテトサラダじゃないの。

流れるようなおタケさんの所作、コレですよ。


グラスをグッと傾けて、ビールを喉に流し込む。プファー

「あぁ、まったく。」

「どうしたの。」


昨日の夜勤、散々やった。

患者が急変したとかそういうんじゃなくてよ。一人の患者(男、六十代)が原因。


 私、看護師やってるけど、夜勤が嫌いだし。夜寝ない患者がもっと嫌いなんだけれども。

「夜中の3時にさぁ、ナースコールで呼ばれてチンポジ直せって。」


チンチンのポジション、略してチンポジ。


 おタケさん、チンポジがいたくお気に入りになったか、グワハハと豪快に笑い、

「アライちゃん、詳しく教えなさいよぉ」

とのたまう。


 昨夜、私が格闘した男性患者、皮膚過敏症で、服の繊維とかがチクチクして痒くなる。普段は、服も下着もゆったりめを着ている。


 それで済めばいいんだが、ゆったりめの下着だと、陰茎や陰嚢の位置が微妙にズレてきて、それがどうしても気になる。


自分で直せよって言いたいんだが、その人パーキンソン病なんだな。神経難病で思うように動かないの、だから看護師呼んでチンポジ調整させるのだ。

「竿を、真っ直ぐにしてほしいんだ。」

「ハァ。」

「ああ、右にいきすぎ。」

「こう?」

「そう。アァ!玉が奥に入っちゃった。引っ張って。」

「こう?」

「うーん、もうちょい。」


あーだ、こーだとチンポジ調整しとる間も、もちろん他のナースコールやら業務はあるしで。


えーい、竿や玉が斜めになっても、おでこについてても死なん。はよ、寝ろー!!


枕で患者の顔を埋めてやりたかったけど、するのは思い留めたわ。まだ、理性が残っていたらしい、私。



 きっと、今日の夜もおんなじ事するんだろう。50代の私ですら気分悪いナースコールだと思うのに、若い看護師さんが対応したら不憫や。


 5年目のナースマンも

「何なんですかね、まったく。」

気色悪がってた。同じ男子でも分かり合えんことはあるのや。というよりも、深夜3時にナースコールする用件がそれかい!って怒りのほうが大きい。


「そんなお疲れのアライちゃんに、はい。」

ソーセージと粒マスタード、ケチャップの皿が、おタケさんから差し出された。

「やっぱり、ソーセージでしょ。」


患者のソーセージはウンザリだわ。おタケさんのは、もちろん頂きます。ビールもお代わりね。


「チンポジ10分500円で、別料金取りたいわ。」

と言うと、おタケさん真顔で

「アタシなら、キッチリしっかり包んで、ベストチンポジにして差し上げるのに。」

だとさ。

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