第5話 孤独死ランキング

 すっかりご無沙汰していた、おタケさんのお店。遅くなりました、こんばんはぁ。


「あらー、いらっしゃい。アライちゃん。アライちゃんの話で盛り上がってたのヨォ。」

と。あらあら?何?私の話?

「みんなでね、こりゃ断トツ、アライちゃんが一番だわ。ってなったの。」

と得意顔で話すおタケさん。


え?何の話よお。話題は何かと思ったら、おタケさんと常連さん達で、お客さんの中で孤独死してそうな人を順位づけして盛り上がってたんやと。


【歌のトップテン】ならぬ、【勝手に孤独死ランキング】だとさ。えー、なんじゃ?孤独死ランキングって。しかも、私が一位かい。



 おタケさんの店の近くで見かけるお婆ちゃん。そのお婆ちゃんは恐らくお一人で暮らしていて、息子さんは遠方にいるらしい。


そのお婆ちゃんは、腰が曲がっているのを通り越して腰がほぼ直角。地面しか見えていないのに、どうやって歩いて買い物行くのやら?と疑問になってしまう。


その、お婆ちゃんよりも私のほうが孤独死するのかい?


「だーいじょうぶよ、あのお婆ちゃんなら。カマキリみたいな民生委員のおばちゃんが毎日目を光らせてるもの。」

だとさ。



 私の機嫌が悪くなったのを察知して、おタケさん

「理由聞いたら納得するわよぉ、アライちゃーん。」

だと。


 親と同居しているのを口実に家事を一切しない。普段何も手伝わないから、食器がどこにしまってあるか、冷蔵庫の中の調味料の場所が分からない。


うん、これは当たっている。そもそも料理嫌いやし、手伝いもしないから、どこに何があるのか分からない。料理作れなくても冷凍食品があるからいいやぁと思っている派。


 動きたがらない、歩くのが面倒億劫。すぐにネットショッピングを利用して段ボールのゴミの山に埋もれている。


ああ、その通り。


今はネットでの買い物が主流。私の若かりし頃は通信販売といって電話やファックスで洋服とか大型の家具とか頼んで、自宅まで届けて頂いていた。


通信販売という便利な買い物の仕方があると知ってから、私は通信販売にハマった。帰宅時間も遅いし、その当時は一人暮らししていて必要最低限の家事は仕方なくしていたけれど、休日は疲労が溜まっているから家でゴロゴロしていたい。そんな私に通信販売はぴったりの買い物方法やったんだ。


家に居ながらお買い物できるなんて、大袈裟やなく夢のように幸せやわ。王道のニッセン、セシールから始めて、ちょっと高級路線のディノス。ディズニーなんかも売ってるベルメゾン。化粧品だとファンケル、オルビスも利用していた、今ももちろん大変お世話になっております。


現代はすごいよね、ネットスーパーで生鮮食料品も購入できるから。

「食料品買いに行くのも面倒くさがるなんてビョーキよ。もうビョーキの域に達しているわ。」


おタケさんも常連さんも、自分の食べたい物は、自分の目で選んで吟味して買うのだと。重たい物ならいざしらず、食べたい物を買いに外出するのは苦じゃないらしい。


ふーん、そうか。

まぁ、でも私は普段の看護師の仕事が、イコール運動しているみたいなもんですからね。

ロコモティブシンドロームなんてものは、今んところ大丈夫でしょう。


「体力はあっても、気力とか社会性にかけるといかんよ。」

と言われてしまった。


「家の中に閉じこもっているのが好きだと、親が居る間は話し相手になってくれるからいいけど、本当の一人になった時ボケてしまうよ。」

と常連さん。


これもねぇ、しかしの話。


看護師で働いていると、いやでも他人相手に話をするし、関わる人も多くて(医師、看護師、薬剤師、患者だけじゃなく、医療事務、看護助手。リハビリのPT、OT。ソーシャルワーカー、放射線技師やら、清掃業者まで。多種多様の人々)結構うんざりする。


休日くらい誰とも会話せずに過ごしたーい

一人時間最高と感じてしまう。

誰にも邪魔されず読書したり、ユーチューブ観ていると時間が経つのは早い。


独り時間が孤独で寂しいとは思えん。

散々社会人として看護師したんなら、独り時間ぐらい味わってもええんじゃなかろうか。

家族がおっても認知症になる人はなるしなぁ。


 おタケさんが、お酒のあてにナスの揚げ浸し小鉢を出してくれた。茄子は好きだ。美味しい。

「手に職あるから、ヘンに小金持ちでプライドがある。そういうところじゃないの?」

とは、おタケさん。


看護師やから技術職ではあるけれど、小金なんかもっていない。贅沢とは程遠い質素堅実な生活やぁ。

プライドも何も、プライドじゃ飯は食えんから、看護師でだめなら倉庫バイトでもなんでもやって稼いだる。最終兵器は生活保護申請やから。


「そうやって色々と考える人って、案外身近にいる人に助けを求めないのよね。」


 おタケさんは、困った事が起きたら、すぐ友達でも誰でも話してしまう。おタケさんが先日、愛車の鍵(年季の入ったママチャリがおタケさんの相棒)が無いない騒いでいたら、それを聞いて見知らぬおばさんも一緒に鍵探すの手伝って下さったんだって。

「ありがたかったわよぉ。」

とおタケさん。


結局ママチャリの鍵は自分のバッグの中にあって(定位置にはなく、ポーチとポーチの隙間に挟まっていたバッグの内側が黒色だから隠れて見えなかっただけらしい)すぐに解決した。


おタケさん、それって他人に助けを求めるんやなくて、他人を巻き込んどるだけやないの?

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