永久の雨道と仮初の少女

篠原かえでしろ

永久の雨道と仮初の少女

雨窓うそう見る しとどに響く五月雨の音 白きビニールが傾いてゆく


暗がりで 街灯は揺らめく 雨道あめみちに現れし少女 背中吸いこむ


透ける傘 雫走りて 光筋 無防備なほど 白き肩線


胸の鼓動 ためらい脱ぎて 駆けだした足 名も知らぬまま 雨に飛びこむ


路灯ろとうの輪に独りたたずめ 冷えてしまう 遠ざかる白と雨リズム


袖重たく じんわり滲みて 灯の下に追わずに見つめ 消えてゆくかげ


街角でふとかたむけて 「振り返る」と期待虚しく 暗闇に消え


その白が闇に溶けていく 瞬きに こぼれ落ちたのは ほほ伝う雨


我返われかえり 初めて知ると 全身濡れた 冷たさ深く しみ透きけった


路地裏で残る雨音 胸奥で形なきもの 揺れ止まずまま

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永久の雨道と仮初の少女 篠原かえでしろ @Shinohara_Kaedeshiro

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