それが一体

頭痛がするのが、少し面白い

遠くに置いた缶コーヒー

また明日、私は少し項垂れるのだろう

それが良いのか、悪いのか


勝手に造った螺旋階段、一本足して、二本引いて

飲まず食わずでからまわる空元気

下駄も裸足も気持ち悪い

口笛も吹けず、ホラを吹いて歩いている

どこにも消えない下手な耳鳴りが心地よかった


硝子が地面に落ちて割れて、それが一体なんなんだ

蝉が地面に落ちて干乾びて、それが一体なんなんだ

夢が知られず出来て敗れて、それが一体なんなんだ

口から血が出て飲み込んで、それが一体なんなんだ

身体は薄汚く、心は泥汚く仕方ない

廃棄場に似た、この部屋で、燃えた香ばしさに、

塵と一緒にカランと笑いながら

近場の通りの、岩を蝕む苔が嬉しくて、

汗の隙間にまた笑う



月日が経つのが、少し面白い

トンボの通ったビオトープ

また明日、私は少し寝違えるのだろう

それも良いのか、悪いのか


勝手に寂れた螺旋階段、一滴落ちて、二日濡れて

伸びて屈んで縮こまる痺れた四肢

歌も語りも気持ち悪い

白線も引けず、砂を蹴って数えている

どこにも消えない下手な手触りが心地よかった


カラスが時間と鳴いて消えて、それが一体なんなんだ

咳が喉に張り付いて癒えて、それが一体なんなんだ

夢が知られず出来て叶って、それが一体なんなんだ

口から血が出て飲み込んで、それが一体なんなんだ

怠惰は薄細かく、希望はきめ細かく仕方ない

廃棄場に似た、この部屋で、冷えた香ばしさに、

塵と一緒にカランと笑いながら

近場の通りの、岩を蝕む苔が嬉しくて、

汗の隙間でまだ笑う


全ての名前は流れ消え、ならず者と堂々と白旗をあげた誰かの名前だけが残った

一際の優雅を見逃さず、何も知らない子供の口笛の心意気を失わず

明かりを思い出せたはずの高架下も、程遠い

それが一体なんなんだとまだ笑う

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