夢の砂粒

空から夢が降ってきたの

吸い込んだらひとたび、息も吸えない輝かしいくらい毒々しい夢よ

揺りかごも、赤子ごと潰れてしまった

生きてたら見れない、致死量の魅了の夢よ


涙で出来たガスマスクで覆って

貴方の頬に触れてくれた温度はこれで最後なのね

柵で囲まれた羊が外を見るように

マスク越しの視界から空を見てしまったわ

風に紛れて迷い込んだ吸い込んだ夢の砂粒


涙で固まる 熱で溶ける 口で噛む 針動く

砂粒が砂漠をつくるでしょう 砂漠に城が建つでしょう 私は

貴方わからないかもしれないけれど、ガスマスク越しの私の瞳には、なにもかも光って見えていたの

乾かない雨の粒 硝子の花 光の筋 通り過ぎる鳥 素顔に触れない知らない世界

内側でしか痛まない世界 砂漠に消えた私の声



愚かな私が咳き込んでいたの

泣き込んだら再び、まともに見れない鏡、卑しい悔しい清々しいアザよ

編み物も、あやとりに紛れてしまった

生きてるとは言えない、魑魅魍魎の徒労の夢よ


涙で夜なべ漬けたピクルス齧って

貴方の頬に触れて感じた安堵もこれで最後なのね

バツで嗤われた囚人が外を望むように

跨ぐ鳥の死体から綿を出してしまったわ

枷に塞がれ折り畳んだ飲み込んだ夢の砂粒


亀裂の入ったガスマスク越し

砂鉄の混じった佇む都市

内側でから回る熱気が剥がすメッキ

消えた都市の面影が零れる音がした


涙で語らう 熱で告げる 口で交わす 針動く

砂粒が蛹をつつくでしょう 砂漠に華が還るでしょう

私は

貴方わからなくなってしまったけれど、ガスマスク越しの私の瞳には、なにもかも浸って癒えていたのよ

乾かない雨の粒 硝子の花 光の筋 通り過ぎる鳥 素顔に触れない知らない世界

内側でしか痛まない世界 砂漠に消えた私の声

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