第14話「運命が揺れる、その先で」



📖 それぞれの夜――


 


 あの日、空き教室で真実を共有したあと、

 3人はそれぞれの夜を迎えていた。


 


 誰もが“答え”をまだ出せていない。

 けれど、あの瞬間から――

 もう「他人事」ではいられなくなっていた。



🌌 奏の夜


 


 ベッドに横になっても、眠れなかった。


 凛の涙が、何度もまぶたの裏に浮かぶ。

 「私の気持ちはどうなるの?」

 その問いは、胸に刺さり続けていた。


 


 俺は、未来を変えたいと思った。

 でも同時に、“過去の凛”ばかり見ていたのかもしれない。


 


 今、目の前にいる彼女の迷いや不安と、

 ちゃんと向き合わなきゃ――。


 


 (俺が守るのは、“記憶にいた彼女”じゃない。

  今ここにいる、“迷ってる彼女”だ)



🌌 神谷の夜


 


 静かな部屋の中、窓の外で風が鳴る。


 彼女の最期の言葉――

 「あの人に会いたかった」という想い。


 


 それでも、自分はまた戻ってきた。

 再び出会えた彼女を、目の前で笑わせるために。


 


 たとえ最後の想いが、自分ではなかったとしても――

 「今の彼女を守れるのは、自分だ」と信じていた。


 


 (過去は変わらない。でも、未来は選べる)



🌌 凛の夜


 


 静かな自室。

 ベッドの上で、指先が震えていた。


 


 夢で見た病室。

 誰かが名前を呼んでいた。

 それが奏だったのか、神谷くんだったのか――もうわからない。


 


 でも、あの夢の中で、私は泣いていた。


 


 (私は、本当は知ってるのかもしれない)

 (だけど、まだ思い出したくない)

 (だって、もし“どちらか”を選んでいた記憶だったら――)


 


 だけど、選ばなくちゃいけない。


 


 「この世界で生きる」ということは、

 ちゃんと、自分で“進む道”を決めることだから。



🌠 そして――


 


 数日後。

 学校では、“ある出来事”が静かに近づいていた。


 


 体育祭。

 そして、その前日の夕暮れ。

 凛は、ふたりにこう告げる。


 


 「……明日、私、答えを出す。

  私の気持ちと、未来を――自分の意思で決める」


 


 運命が揺れる。


 でも、その先で、

 たったひとつの“本当の未来”が、静かに待っている。

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