第12回 毎年修正している数字をなぜ検証しないのか

 作況指数の発表が廃止となりました。今後詳しく米の在庫状況を調べるようです。


 現在の状況でこの発表は意味ないです。作況指数は地域ごとの米の出来具合を示しているだけで、実際の米の集荷量は別の数字になります。

 簡単にいってしまえば作況指数が101でも作付面積が小さければ収穫量も少ないですし、作況指数が99でも面積を増やしていれば収穫量が増えます。


 今回、素人がいろいろ調べてみましたが米不足と言いつつ米の民間在庫に注目していた報道が少ないです。

 米高騰陰謀論を唱える方の根拠は去年より米がとれているのに米が値上がりするのがおかしいとする意見です。かなり的外れな意見のはずですがTV報道では主流の考え方です。

 この意見の何が間違っているのかですが、簡単な例を出しますと、


 1,あなたの貯金は200万円です。

 2,毎年700万円使って生活しています。

 3,去年の収入は660万円で貯金が160万円に減りました。

 4,今年の収入は680万円で貯金が140万円に減りました。


 この例で収入が増えているのに貯金が減るのはおかしいと主張されましても、生活費が収入を超えているわけですから貯金は減ります。同じ理屈のはずなのですが、


 1,米の民間在庫が200万tでした。

 2,近年の米の消費量は700万tを維持しています。

 3,去年の収獲が661万tでした。民間在庫が減ります。

 4,今年の収獲が679万tでした。民間在庫が減ります。


 これが令和6年産米の状況です。大臣発言やTV報道でも去年より収穫量が増えているのに米不足はおかしい、どこかに米が隠されている、と主張されています。

 作況指数の発表廃止も例年並みになのに米が足りないのはおかしいとの主張からですが、そもそも令和6年の需要予測が682万tで収穫が679万tです。

 需要予測分しか作付けしていませんでしたから、確かに平年並みではなかったにしろほぼ計画通りです。作況指数との誤差も大きな影響を与えるものではありません。


 ではどこに修正すべき数字があったのかといえば実際には700万t以上米を消費いているにもかかわらず、需要予測682万tを正しい数字として扱っている点です。

 令和5年生産量では40万t不足、令和6年生産量では20万t不足、合計で60万t不足が米高騰の正体です。


 米の流通においてこの60万tの不足がどれほど重要な意味を持つのか検証している報道がないのでおおよそを計算してみます。


 1,令和6年米需要量705万tで確定

 2,令和6年度一人当たりひと月の精米消費量4.7kg

 3,2より日本全体の年間消費量

   12か月*1億2000万*4.7kg=67.6億kg=676万t

 4,ひと月あたりに外国人の消費や通常計算されない米の量

   (705ー676)/12=2.4万t 

 5,令和6年度家庭内米消費割合67.5%

 6,令和6年度店頭販売の米入手先割合

   100-(4.8+8.3+14.7+3.1)=69.1%

 7,令和6年度ひと月に店頭販売される米の量

   705*0.675*0.691/12=27.4万t

 8,店頭販売以外で消費される精米の量

   705/12ー(27.4-2.4)=33.75万t



 上記の計算からわかるのは店頭販売される精米が最大で27.4万t、通常の食事以外で消費されている分考慮すると25万tが店頭で販売される精米の量になります。

 一人当たりの米消費量を調べると令和6年7月から令和6年12月までの6か月で前年同月比がほとんど減っていないことを考慮すると705万tの半分の353万tが少なくとも12月末までに消費されています。

 令和6年米生産量が679万tで令和6年6月末在庫が153万t、353万tが消費されているので残り479万tになります。

 479万tのうち店頭販売されない分の米が卸売業者の倉庫で保管されました。この米は学校給食や飲食店で使用される分なので小売業者に売れません。この米の量が8月まで使用する分で33,75万t*8か月=270万tです。

 在庫量479万tのうち小売りに卸せない米270万tを抜くと209万tが残りとなります。しかし、令和6年度の店頭販売のペースで米を販売すると25*8=200万tとなり民間在庫含め在庫がほぼ無くなります。つまり令和7年1月時点で8月まで在庫が持たないことが見えたことになります。そのうえで、米の移動と精米に時間が必要なことを考えれば民間在庫量がひと月分の60万t下回ることは流通が止まることを意味します。

 昨今の米生産量60万tの不足とは流通が止まるラインを踏み越えるだけの不足でありました。


 令和7年になり米の価格上昇が加速した背景には令和6年産米の量が確定し米が足りないことが明確になったことがあります。このような状況下では経済の原則通り供給が足りないため価格が上がり、価格上げから消費が抑えられ、新米の流通が始まるまで米価格が高騰することになります。

 

 上記の数字は農水省が把握している数字になります。JAや卸売業者が流通を歪めなくとも米が高騰する状況は資料から確認できます。もしこの状況を把握できないのであれば無能の烙印を押されても仕方ありませんし、何らかの意図をもって嘘をつくのであれば今回の米高騰の黒幕であったことになります。

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