第11回 米の需要が増えることが示す危機
農水省が確定した米の生産量と需要量及び民間在庫の数字から直近の傾向を読み解きますと需要を満たす生産量が無くなりつつあり、政策の変更がなければ令和7年の生産量が最大値になります。高齢農家の引退に伴い跡継ぎのいない農家の廃業が増え生産量が減ります。また、米の生産量の増加については需要を上回る水準の生産量がなければ意味がありません。コロナ禍後とウクライナ戦争の影響で米の需要が伸びましたが令和7年時点で米の需要が下がる様子を見せていません。民間在庫はコロナ禍中は飲食店の営業禁止により米在庫が増えていましたが、コロナ禍後に米の生産が需要を下回る状態が続いたため、令和6年中に余剰米が無くなりました。令和6年産米も需要を満たす生産量でなかった為、以降米不足が続いています。
米の生産量と民間在庫の減少については原因と今後の傾向がわかりやすいのですが、米の需要は国民一人当たりの米の消費量で毎月統計で発表されておりこれをもとに需要予測が計算されます。ところが令和4年以降、ウクライナ戦争により小麦が値上がりし、米の消費が増えたため国民一人当たりの消費量は需要予測より減りにくくなっています。
ここまでの説明で現在の米の需要量が説明できるのであれば問題がないですが、最近の傾向の中に米の需要が増える要素があります。それは廃業した農家から縁故米をもらっていた場合、農水省の統計データに含まれていない可能性があります。
令和5年の米の消費量の16%が縁故米であったとの統計がありますが、農協を通さずに籾摺りができる環境にあれば生産量の統計から外れることができます。
令和5年の米需要が約691万tでありこの16%は100万tを超えます。すべての縁故米が統計から外れているわけではありません。しかし、誤差と無視するには厳しい影響力があります。
これらの米が生産者の高齢化や機械の故障などの理由で生産をやめた場合、米の需要を押し上げる可能性が高いです。
結局のところ、まず第一に考えなければならないのは米農家の高齢化と事業を継承する後継者不足です。農水省の資料からです。
水稲作付経営体数(法人その他含む組織数)
2010年 116万9千
2015年 95万2千
2020年 71万4千
2023年 57万6千
水田利用状況推移 (万ha)
主食用米のみ 主食用含む 水田転用可能 耕作放棄地含む
水田 他作物農地 水田可能農地
2010年 158.0 165.7 208.6 235.5
2015年 140.6 162.3 204.0 231.0
2020年 136.6 157.5 197.5 224.8
2022年 125.1 154.5 195.0 222.3
面積別70歳以上水稲生産者数(2020年)
水稲作付面積 70歳以上 全水稲生産者数
2ha未満 380,597 (58%) 656,203
2~5ha 57,017 (45%) 126,705
5~10ha 19,566 (35%) 55,905
10~15ha 7,271 (31%) 23,455
15ha以上 13,599 (31%) 43,869
全体 478,000 (53%) 906,137
資料からわかるのは2010年から2023年の間に農家が半減していますが、その分の農地を大規模化した農家や法人が引き取っているため農地の減少量は緩やかになっています。とはいえ主食用米用水田が2割減っています。
また、2025年時点で2020年の統計より農家の高齢化が進んでいることを考えると水稲作付経営体が50万を切り水稲生産者数も70万人を下回る可能性が高いです。
小規模農家のほうが縁故米の割合が高い為、近年の需要増の裏に高齢化による小規模農家の激減があると推測されます。
団塊世代のピークが現在75歳です。この世代の方が引退しますと、さらに就農者が激減します。早急に新しい世代に就農してもらえる構造改革が必要となっています。
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