第8回 米農家がいなくなる
今後米農家が高齢化により激減するすると予想する方は大勢います。定収入、重労働で若い人材が入ってこない為平均年齢が高止まりしている等の説明はよくありますが、今回は少し違った視点からの指摘です。
日本の米農家の平均年齢は70歳前後です、統計を取る手法やタイミングで細かい数値は変わるでしょうがここでは70歳とします。ベビーブーム世代の平均年齢が令和7年で75歳であることを考えると、現在最も多く米を作っている世代は75歳前後となります。
2025年に75歳であれば生まれたのは1950年になります。つまり、今最も多く米を作っている世代は戦後食料が不足していた時代を知っており、食糧生産を増やすことが正しいとする時代を知っている世代とも言えます。
減反政策の開始が1971年となりますので子供のころに減反政策が始まった方は65歳前後、1990年ごろのバブル期に社会人になった方は1970年前後生まれなので現在55歳ぐらいとなり、バブル崩壊のころに子供であった方は45歳前後となります。
まず何を主張したいかといいますと、食糧生産の重要性についての理解度は子供のころの体験に影響を受けるという点です。もちろん個人差はありますが、戦後の食糧難を知っている世代と飽食時代に育った世代の価値観が違うのは当然のことです。
食糧に余裕がなかった世代、食糧に余裕のあった世代、経済的に余裕のある世代、経済に余裕のない世代、それぞれが異なる価値観で農業を見ますので現状についての認識が世代によって異なります。そして、この中で最も農業に近かった世代が人口を減らしているのです。
食糧難を知っている世代が定年後に退職金を使って農業を始め、日本の食卓を支えてていましたが、これが終わりを迎えます。
当然、年齢的な問題もありますが零細農家のほとんどは次に機械を買う余裕はありません。高額な機械を買っても減価償却をするほどの期間、米作りを継続できません。機械が壊れれば廃業する方がほとんどです。兼業農家の中には親が定年後に農作業をはじめ、ほかの職業に就いた子供が休日に農業を手伝うような規模の農家も含まれます。このような小規模農家は日本全国にいました。
ところが今は以前と違い、親と同居する家庭が減っています。各都道府県の人口推移を確認したところ、1975年の50年後の予想値と現在の人口分布を比較しますと、日本の総人口は予測値と大きな違いがないのですが、各都道府県での人口分布で確認しますと地方では予想より人口が減っていて、都市部では予想より人口が増えています。
限られた場合を想定しているように思われるかもしれませんが、日本人が食べている米の総量のうち15%が縁故米です。縁故米とは生産者が家族や親戚などに渡す米です。流通に数えられない米になります。
令和6年産米の生産量が680万tとしますと、15%は約100万tになります。令和7年の米の高騰が60万tの供給不足から起こったことを考えますと、現段階での小規模農家の廃業は深刻な供給不足を引き起こします。
また、近年の米不足にも拘わらず米生産量が増加しにくい理由もここにあります。先にも述べた通り、高齢の米生産者で設備投資をして生産量を増やす方はごくわずかです。大体の方は機械が壊れた時点で廃業するために設備投資しません。設備投資ができるのは後継者のいる農家だけです。
次の世代の米作りがどのようになっていくのか、まだ形が出来上がっていません。しかし、70歳以上の農家に働いていただける時間には限りがあります。令和7年の米高騰において米がない現実を受け入れない方が大勢いますが、まず生産者が減っています。米農家に近い方であればあるほど生産者の減少が身近にあります。
農業の集約、農地の大規模改造、AIの活用、生産コスト、米の買取価格、事業の継承、生産者の確保、生産者の生活基盤の保証、農業機械の高度化等々、解決すべき問題が山ほどあり、残された時間はわずかです。
今回は備蓄米をほぼ使い切りました。新たな備蓄米が補充されるのが先か、次の米不足が先かですが、誰かが農業をやってくれるだろうと言っているうちに米農家がいなくなります。
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