第7回 米が足りない根拠
今年の米の供給不足について米が不作であったかどうかを問題にされる方がいますが、作況指数が現状を反映していたかどうかは実はあまり関係がありません。
重要なのは減反政策(作付け変更に対する補助金事業)であり、政府が米の需要量を674万tと予測していたことで、令和6年産米の生産量予測が679万tとなっていたことに問題があります。
こちらは2023年に発表された令和4年速報値と令和5年見通しです。
令和4年6月末民間在庫・・・・・・・218万t
令和4年産生産量 ・・・・・・・670万t
令和4年6月末供給計 ・・・・・・・888万t
令和4年主食用等需要量・・・・・・・691万t
令和5年6月末推定民間在庫・・・・・197万t
令和5年産推定生産量 ・・・・・・・669万t
令和5年6月末供給計 ・・・・・・・866万t
令和5年推定主食用等需要量・・・・・681万t
令和6年6月末推定民間在庫・・・・・184万t
実際の令和5年速報値がこちらです。
令和5年6月末民間在庫 ・・・・・197万t
令和5年産生産量 ・・・・・・・661万t
令和5年6月末供給計 ・・・・・・・858万t
令和5年主食用等需要量 ・・・・・702万t
令和6年6月末民間在庫 ・・・・・156万t
こちらは令和7年6月に配布された資料からです
令和6年6月末民間在庫 ・・・・・153万t
令和6年産生産量 ・・・・・・・679万t
令和6年6月末供給計 ・・・・・・・832万t
令和6年主食用等需要量・・・・・・・674万t
令和7年6月末推定民間在庫・・・・・158万t
令和6年の速報値は令和7年8月までに発表されるかと思いますが、こちらはまだ予測値になります。
まず注目頂きたいのが各年の需要量です、年々減る予想がされています。ところが実際には令和5年の需要量が700万tを超えています。令和6年の需要量も700万t超えていることは第1回で説明させていただいています。ところが令和4年から6年まで米の生産量が700万tを下回る数値になっています。本来、年間生産量690万tを目指す方針をとっていれば米の高騰は起こりえませんでした。
農水省にとって直近5年間の米の消費動向が把握しにくい状況であったことは事実です。影響が大きい例としまして、令和4年2月からのウクライナ戦争によって小麦の値段が高騰し、米の消費が増えたことも要因としてあります。コロナ禍で飲食店が閉まり、米の消費量が減り、令和5年5月の行動制限解除で米の消費が上振れすることは令和4年中に予測できるものではありません。
ただ前年までの消費動向から令和6年の米消費が予測値通りにはならないことは予見できたはずです。令和7年の作付面積の増加により生産予定数量719万tとなりましたが、備蓄米を備蓄しなかった場合までも含んだ数字です、対処療法として備蓄米が放出されましたが、いまだに今回の米不足の原因の根治が望めません。
裏付けの取れない話になりますが、令和5年9月に2つ聞き及んだ話があります。
1つ目はくず米が不足して値上がりしているというものです。くず米は籾摺りのときに出る不適格米です、主に米粉や米菓子の材料になります。このくず米が不足し加工食品を作るのに下手をすると主食用米が使われるかもしれないとのことでした。実際に令和5年よりも令和6年でくず米の買取価格が上昇しています。2つ目は米不足が来るかもしれないので大手業者が飲食店用の米を集めているとのことでした。
さて、繰り返しますがこの話は令和5年9月の話です。令和5年と令和6年は高温障害とカメムシの影響があったといわれています。ところが不作といわれる割に生産量の予測と確定値との差よりも、需要量の差のほうが大きいことがわかります。主食用米どころかくず米ですら不足し始め、飲食店が営業するために大手業者が動いていましたが、政府が米不足に対して対応する様子がみられないまま、令和6年8月に米不足が社会問題化しました。
農水省に近い考え方のJAがほかの集荷業者に米を買い負けるのも当然です。彼らは令和5年中から準備をしていたわけです。ただ、ここでの準備とは米の安定供給の準備です。米価格つり上げ目的ではありません。
米5㎏の全国平均価格です。
令和6年6月 2321円
令和6年7月 2410円
令和6年8月 2649円
令和6年9月 3037円
令和6年10月 3473円
令和6年11月 3626円
令和6年12月 3679円
令和7年1月 3827円
令和7年2月 4080円
令和7年3月 4377円
令和7年4月 4543円
店頭販売価格が上がる前に米のスポット価格が上がることを考慮しますと、資料よりもひと月前に値上がりしていたことになります。それを踏まえ米価格が大きく伸びるタイミングが令和6年8月と12月にあります。米価格が伸びるひと月前です。
令和6年8月はスーパーの棚から米が消えた時期です。また、令和6年8月から11月までが収穫された米を集荷業者が買い集めていた時期になります。この時期の集荷業者の活動が米の値上がりの原因となっていたのは否定できません。ただ、この時期は米の作況指数が出る前なので、米を買い集めることにはリスクがあります。
2度目の値上がりタイミングは令和6年12月です。令和6年産米の収獲状況が判明する時期になります。このタイミングで政府の米価格への介入がなかった為、米の高騰が加速しています。もし自分が転売屋であればこのタイミングで参入します。令和6年産米が需要に対し供給不足であるのは確実で、12月以降に米の収獲が行われないからです。政府が米不足を否定していたことも米価格高騰を後押ししていました。
まず事実として認めなければならないのは、まず米不足があり、集荷業者が米を買い集め、政府が米不足対策をとらなかった為米が値上がりした。この順番です。
Switch2やPS5を例に考えていただければわかりやすいと思います。初回出荷が十分にあれば、もしくは、転売に対する対策が取られていれば価格の高騰はありません。
令和6年産米の収獲量が令和5年産米の収穫量を上回っていたので米不足ではないと主張される方がいますが、重要なのは供給が需要を上回ったかです。令和6年は供給が不足していたのです。
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