第4回 JAの失敗
米の高騰の原因は流通過程ではないのですが、JAに問題が無かったかといえば問題はありました。
筆者の考えるJAの失敗は2点あり、1つ目は令和6年産米の集荷が少なかった件です。JAは令和6年産米の集荷が179万tで昨年の86%に減少と発表しています。米の生産が令和5年産661万t、令和6年産679万tとされていることと合わせますと、前年比で全国の米の収獲が増えている年に集荷量を減らしたわけです。
米が集められなかった原因は、ほかの業者が概算金より高値で米を買い集めていたことや、これまでの農家とJAの付き合いの中でJAが信用を失っていたことなどいろいろあるかと思います。
結果、よその業者が集荷量を増やし、JAに米を卸さなかった農家が増えたことからもJAが集荷に油断していたといわざるを得ません。特に普段から農家に米の講習会を開いているJAの立場であれば、米の在庫量や天候、カメムシ被害の影響などの対策をとっていて当然であったはずです。
2つ目は購入した備蓄米の扱い方を失敗したことです。
入札分の備蓄米は契約状況、出荷時期待ち分、契約済み出荷日未定分、出荷済み分が報告されており、JAが独自の判断で意図的に出荷を遅らせている形跡はありません。仕入れた米を受け入れ先の状況に合わせて出荷する段取りも組まれています。JAが報告している備蓄米の放出状況は通常業務とてしては適正な対応をしていることが確認できます。
ただJAが落札した米は非常時に放出する備蓄米であり、流通方法も非常時に準じたものであるべきでした。非常時に使う米をJAの通常業務と同じように扱ったため令和6年に集荷できなかった分の米を備蓄米で補填したと指摘されても否定できない扱いになっていたわけです。(筆者としては実際に不足分の補填をするため農水省に依頼したと考えていますが証拠はありません。)
繰り返しになりますが、米の放出スケジュールに問題はありません。実際、混乱なく予定が組まれていまし、新米の収穫前に米が在庫切れにならないよう一定の量の米を放出する手法も自前の在庫でやっていただく分には問題ありませんでした。ですが国民が期待したのは米の値下がりであり、米の安定供給ではありません。
JAが購入した備蓄米は令和5年産と令和6年産の米なので下手に味を意識してブレンド米にせず、そのまま精米して店頭に並べるべき米でした。備蓄米であることを隠す必要はなかったのです。特に令和6年産備蓄米は通常の米と何ら変わりありません。
随意契約の備蓄米が流通したためJAが慌てて備蓄米を放出しだしたとの主張は、JAが毎週公表している備蓄米に関する報告書の内容に合わないため、この主張が事実無根であることは証明できます。
無知による思い込みでJAが非難されることは是正されなければなりませんが、JAの対応に問題がないかといえば問題はあります。JAは独占禁止法が適用されない民間企業です、根拠のない誹謗中傷は除くとしても、農家から信頼を得られる組織であってほしいと願います。
また、企業が無知のよる非難を受けている案件で、小泉農水大臣が大手卸売業者の売り上げと営業利益について言及していますが、これも無知による思い込みです。なぜ売上が20%増で利益が500%の決算になるのかわからないのであれば、四季報を熟読することをお勧めします。現役大臣が算数ができないことを公然と発言し、更にこの発言が問題なしと報道してしまう報道機関もかなりひどいです。次回このあたりの説明をします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます