第22話

 リッチ事件から数日が過ぎた。

 私たちは再び森の中でアンデッドを狩っている。

 以前あれだけ倒したのにもう森の中は亡者の巣窟となっていた。


「水道内にリッチかい。恐ろしいね。見回りを強化しよう」


 あの後、すぐに領主への説明のために館に呼ばれた私たち。

 リッチは倒したと赤い魔石を見せて証明する。

 そのことで領主はかなり焦っていた。


 ちなみに魔石は私たちのものとして認めてくれた。

 死者蘇生の呪いについては伏せている。モディが魔女だとバレてしまうからだ。

 あの少女達も今は街を後にしている。

 リッチになっていたことがばれればただじゃすまない。

 一応誰にも話さないようにも言ってある。

 まあ、一度死んで生き返ったなどだれが信じるかはわからない。


「お前さんたち、私にまだ話してないことがあるだろう?」


 勘のいい領主様はそう私を脅す。だが言うわけにはいかない。

 リッチの討伐をしただけとしか話せなかった。


「まあいい、お前さんらが本気で何かを企てたら私らに止める術はないからね」


 そんなことを領主様は言い出した。

 まあ、剣姫ニコラ魔女モディが本気で暴れたら街がどうなるかは知れている。

 領主と衛兵だけではどうにもならない。街が滅ぶこともあり得るだろう。


「褒美は何がいい?」


 領主様はそう言う。考えてだした答えはこうだ。


「また森のお家で暮らしたい」


 というささやかなものだった。

 最初はそれでいいのかと聞いてきた領主。しかし少し悩んでいた。


「本当は監視を増やしたいくらいだけどね。まあいいだろう」


 そう言うわけで今日も夜更けに森の中。

 森の中は相変わらず複雑なにおいで鼻がおかしくなりそう。

 ゾンビーにまた気分を悪くさせられる。もう吐かないけど……


 最近やばい相手とばかり遭遇してたから気が緩んだりしそうだが夜の森はやっぱり怖い。震えながら周囲に警戒しアンデッドを葬る。


「だいぶ魔女らしくなってきましたね、ステラ」


 彼らを魔法で倒してあげるのは魔女の仕事だ。

 殺されて苦しんだはての小さな救い。一番の安息。


 正式には魔女は血が蒼いもののことを言うらしいけど領主のおばさま曰く魔法を使って人々を救ったものが本来の魔女らしい。


「そうだね。ステラも魔女だよ。何人かの人を救ってるもの」


 私も名乗ってもいいのものだろうか。魔女を。


「そうですね。魔女みならいは卒業してるでしょうね」


 相棒に認められてうれしく思う私がいる。


「なら私も魔女を名乗ろうかな」

「もちろん、人前ではやめてくださいね。」

「そうですね。領主にバレればまた怒られるよ?」


 そんなこと言いあって笑う。

 他の魔女はどんな人がいるのかわからないけど会う機会もあるのかな?


「では、しばらくの間。家の管理をお願いしますね」


 ニコラは私にそう伝える。

 魔女たちは殺され魔石となりバラバラになったトリッシュを探している。

 トリッシュの欠片を見つけるためには世界中を回らなければならない。

 森の家はその拠点の一つ。装備をそろえて近く旅に出る予定なのだ。

 領主には知り合いに会いに行くと伝えている。

 

「絶対に私のいない間は仕事は休みにしてください」

「大丈夫だよ。一人で無茶なんてしないって」


 本当はついていきたい。だがこの世界の旅は危険が付きまとう。

 基本は徒歩だし、ましてや少女二人。絶好の鴨に見られるだろう。

 そして、ニコラの進行に私では追いつけない。

 長距離の歩きでの行進は私では難しい。旅慣れてはいないからだ。

 

 あと、なん日も仕事を空ければ街がアンデッドの群れに襲われかねない。

 数日以内に帰ってこないとなのだ。私がついていくと予定が狂う。


 街の近く。ここならモディもいるから私の危険は少ない。

 ニコラは安心して家を空けれる。


「では行ってきます」

「うん、気を付けてね」


 短く抱きあって別れを惜しむ。ニコラはそう言い旅立っていく。

 戻るのは四日後の予定だ。

 隣の大きな町に行くらしい。そこにも魔女が潜んでいるのかな?


「お土産期待してますね~」

「ええ、期待しててください。モディ、くれぐれもステラのことを頼みます」


 モディの言葉に手を振り返し歩いていく。

 剣姫であるニコラなら無事に戻ってこれるはずだけどやっぱり少し寂しいし心配だ。

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