第30話「ナメプの末路と和解といぬこ達の帰還」

ログハウス前。

周囲は小鳥たちのさえずりとかすかに頬をかすめる程度の心地がいい風が吹き抜ける。

システィアとリューコが互いに一定の距離を保ちながら対峙する。

最初に切り出したのはシスティアだった。


「障壁を張っておきました。どれだけ暴れてもログハウスや周囲には何ら影響はありません。」


呆れた様子でリューコを見つめるシスティア。

対してリューコは鋭い眼光とただならぬ覇気を纏っている。システィアが思わず声を漏らしながらリューコを見る目が変わる。


「おお。すごいですね。この感覚…久々です。私の世界で言う【邪竜】と同じくらいの覇気ですね。」


「アンタの世界でも、いたのね。龍、そう。でも、こっちはそんな三下の龍と一緒にしないで欲しいわ。」


「…そのようですね。では、始めますか。」


満面の笑みでシスティアは答えた。

その刹那、一定の距離があったにも関わらずシスティアはリューコの背後に立っている。


「なっ!?!」


リューコは急いで防御に徹するがわずかに間に合わず、システィアの攻撃を許してしまう。


「よそ見はだめですよ。リューコさん。」


ニタァとまるで悪魔のような凶悪な表情を浮かべながらリューコの顔面めがけて拳を振るうシスティア。

リューコの頬にシスティアの拳が通る。

勢い良く突き飛ばされ、リューコがゆらゆらと立ち上がる。


「なるほどね。口先だけじゃないのが良くわかったわ。」


「流石リューコさん。今のまともに入ったはずなのに…傷がなくなってる。自己再生ですか?」


笑顔で質問するシスティア。

リューコはキッとシスティアを睨めつけながら警戒を怠らず答える。


「自分の目で確かめなさい。戦闘中に自らを語るなんて馬鹿がすることよ。」


システィアの口角が吊り上がる。


「確かに…。愚問でした。なら…言葉通り、この身で確かめるとします。」


瞬間システィアの姿が消えた。

再び背後に気配を感じるリューコ。


「ほら、また背後を取られてますよ。リューコさん。」


「そうかしら。」


システィアが拳を振りかざそうとしたその時、肌に感じるひんやりとした空気に気がつく。

リューコを軸に障壁ごと凍てついている。


「…これは…」


「悪いけど…私の勝ちよ。」


リューコは勝ち誇った様に語り、システィアはすぐさま反論する。


「何言ってるんですか。たかが周囲を凍らせたところで…私の攻撃は…」 


システィアが反撃しようと移動を試みるが体の動きが鈍くそして重い。

徐々に足先から手足の感覚がなくなってきている。


「身体が…思うように…動かない…っ…」


「最初からナメてたでしょ。システィア。」


リューコの氷のように冷たい視線がシスティアに向けられる。

システィアも思わず息を呑む。


「…………。」


「負けを認めなさい。システィア。」


しばらくの沈黙の後、システィアは潔く負けを認め障壁を解除。

そこへシスティとツキノが駆けつける。


「ちょっと!2人とも何やってんですか!」


血相を変えたようにツキノが心配そうに二人に話しかける。

リューコがシスティアに代わり事情を説明する。


「あー…なるほど。でもリューコ、流石にあれは…」


システィが事情を知ると同時にある場所に視線を送る。

それは、リューコなりの制裁としてシスティアを氷付けにし一時的に行動不能にしているのだった。


「いぬこが帰ってくるまでにあれ溶けるの?」


「知らないわよ。」


「リューコ…ごめんなさい。」


「なんでアンタが謝るのよ。」


「…姉だから。血のつながりこそは無いけど…放っておけないから…。」


頭を下げてシスティはリューコに頼み込む。

するとシスティに続きツキノも頭を下げてリューコに頼み込んだ。


「な、なによ!ツキノまで!?これじゃ私が悪者みたいじゃない!」


「ツキノ…どうして。」


「ボクもシスティアさんと話してみたいですから。それだけですよ。」


リューコが呆れた様子でため息を吐くと同時にシスティアの氷付けを解除。

リューコはそのまま自室へ向かっていこうとした時システィがリューコに対して感謝と謝罪を伝えるとリューコは渋い顔を見せつつシスティアに関しての躾をシスティに口が酸っぱくなるまで話すとリューコは止めた足を前に部屋に戻るのだった。


リビングではツキノがシスティアを呼びかけるが反応がない。

システィが駆けつけツキノに代わり呼びかけた。


「システィア!システィア!」


システィアの身体は冷たく唇が紫色になっている。


「う…ぅ…寒いです…はっ…くちゅ!!!」


ガタガタと身震いが止まらずシスティアはぐったりしている。


「ツキノお風呂焚いといて!」


「りょ!了解!」


お風呂が沸くまでシスティはシスティアを自室に運びベッドに寝かせ、ツキノを手伝う。


「お待たせ。悪いわね…ツキノ。」


「へ?何がです?」


「いや…私達の事なのに。」


「言ったでしょ?仲間ですから。」


「それに皆仲良くが一番ですよ。むふふ!」


「………ありがとう…。」


その後お風呂にシスティアを放り込むとシスティアは元気を取り戻した。

すっかり温まったシスティアが最初にとった行動はリューコへの謝罪。

リューコはその謝罪を受け入れログハウスの外で2人涼んでいる。

ツキノとシスティもその場に合流する。

何気ない話で会話に花を咲かせて盛り上がっていたところにようやくいぬこたちが帰宅。


「ただいまー!みんなー!」


と手を振るいぬこに対して4人で返す。


「おかえりー!」



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零却寺プロジェクト 零却寺紫水 @reikyakujiproject

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