第5話「森の異変と護衛の朝」


蛇の魔物と戦闘からしばらくが経った頃。

魔物の森では異変が起き始めている。

普段なら対して手間取らない魔物が現在何らかの影響で活発化している。

人里から魔物の素材を確保しようと森に入った人間たちが下級の魔物に返り討ちにされて素材確保が難航。

この話は魔物の森に住んでいるいぬこたちにも届いていた。


早朝、コンコンとログハウスの玄関を叩く音が聞こえる。

2回、3回とノックをした後、玄関越しに声が聞こえる。


「すみません!いぬこさん!いぬおさん!」


少し焦った様子で玄関越しにいぬこといぬおを呼ぶ人物。

最初にそれに気がついたのはいぬおだった。

いぬおは自室から千鳥足で玄関へ向う。


「ん……なんだよ。まだ寝てたんだぞ…」


不機嫌気味だが仕方無しにいぬおは玄関のドアを開け

るとそこに立っていたのは、以前に依頼を受けた商人だった。

以外な来客に少し驚くいぬお。

間をおいて困惑した表情で口を動かす。


「あんたか…こんな朝早くなんだ?」


「単刀直入に言いますと…商店街まで護衛をお願いしたいのです。」 


「……わかった。とりあえず…上がって待っててくれないか?」


それを聞いたいぬおが判断、商人をリビングのウッドソファーに座らせ自室へと戻って渋々着替えた後に姉であるいぬこを起こす。


「ん…あ…おはよ?いぬお?どうしたの?」


ベッドから寝起きのいぬこがむにゃついた表情でいぬおに質問する。

いぬおは内心の煩悩を押さえつつ抑えつつ葛藤し続け何とか煩悩退散、心頭滅却。


「実は…」


いぬこに手短に説明を終えるといぬこが仕事モードに切り替わる。


「着替えたら下に行くね。」


いぬおは部屋から退散。

リビングへと向かい、商人と向い合せのウッドソファーに腰かける。

商人は辺りを見渡すまでもなく落ち着いている。


「悪いな。待ってもらって。」


「いえ、こちらが朝早く押しかけてしまったせいで…迷惑かけてすみません。」


申し訳なさそうに頭をペコペコと下げる商人。

するとそこへ着替えたいぬこがやってきて軽く挨拶した後、いぬおの横に座る。


「すみません。商人さん。待たせちゃって。」


「いぬこさん。おはようございます。こちらこそすみません。」


「それで…いぬおから聞いたけど…護衛?したらいいんですか?」


「はい。おっしゃる通りです。もちろん…迷惑料も兼ねますし報酬は多めに支払うつもりです。」


それを聞いた途端いぬこの瞳にキラキラとした何かがいぬおには見えていた。


「護衛の任、了解しました。支度するのでもう少し待っててもらえますか?」


するといぬこはその場を後に自室へと消えていく。


「いぬこさんはお金が好きなんでしょうか?」


「そうですね…恥ずかしい話ですが。」


「全然恥ずかしいことではありませんよ。お金は全て、お金があれば命と病気以外何でも解決出来ます。」


「まぁ…な。」


「いぬおさんは、お金嫌いですか?」


「お金…か。普通だ。ふつう。」


「じゃあ…欲とか無いんですか?」


「なんだ、その質問…。」


「当ててあげましょうか?」


「いや…ろくなことにならなさそうだからいい。」


何でもない会話を続けて約10分いぬこが自室から戻ってきた。


「2人とも楽しそうだね?何の話ししてたの?」


少しワクワクしているいぬこにいぬおがさっきの会話の内容を伝えるといぬこは照れ臭そうに目を泳がせていた。


「………………。」

(私…そんなに報酬報酬って顔出てたかな…恥ずかしすぎるでしょ!!!)


「大丈夫か?姉貴?」


「いぬこさん?」


「あ、!大丈夫!大丈夫!私!人助け大好き!いえーい!」


2人が心配そうにいぬこの方を見るがいぬこは苦笑いで話題を切り替えログハウスの玄関を開け外に出ていった。


「きっと…恥ずかしかったのかもしれないですね。」


「だろうよ…。」


こうしていぬこ達はログハウスを後に、江野町商店街へと向かうのだった

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