4章 5話 打ち解けてきた
良太郎と私は花火大会の会場に着いた。何とか車を停めるスペースを確保できたので良かった。
会場はガヤガヤと賑やで老若男女様々な人達が来ている。時刻は19時50分頃。
もうそろそろ花火大会が始まるだろう。去年も凄かった、今年はどうだろう。毎年違った人と来ている。
と言っても初めて来たのは一昨年、その年は両親と来て、去年は兄と来て、今年は良太郎と来ている。
他人と来たのは今年が初めて。初めて来た時は馬鹿でかい打ち上げ花火の音にビビった。まるで、気の弱い男の子のようだ。驚いてもさすがにチビってはいないけれど。
そして不意に花火が打ち上げられた。豪快で綺麗な大輪の花火。一年に一回しか見ることができない。まるで、織姫と彦星のようだ。
因みに日中は公民館でビアガーデンが行われたらしい。私はお酒が弱いしビールは苦くて呑むことができない。仕事があったからもちろん行っていないけれど、休みでも行くことはないと思う。
ビアガーデンは以前行った事があるけれど、若い男女は少なく、年輩のお客さんが多い。だから、尚更行く気にならない。
良太郎と私は次から次へと打ち上げられる花火に圧倒されていた。見た事がないわけではないけれど、打ち上げ花火の大音量と綺麗さにはどうしても慣れることができない。
私は良太郎に訊いてみた。
「花火大会に来たことあるの?」
花火の音で聴こえなくなりそうなので、合間を見て話しかけた。彼は笑顔で、
「この町で見るのは初めてだけれど、別の街で見た事はあるよ」
「そうなんだ」
私は良太郎にだいぶ打ち解けているなぁと感じた。彼も同じ事をもしかしたら思っているかもしれない。なので、彼に話してみた。
「私、だいぶ良太郎に打ち解けてきたみたい。良太郎も私に打ち解けていると感じる?」
すると彼は、
「うん、そうだね。確かに慣れてきた感じはするね」
私は、
「よかったー、否定されたらどうしようかと思っちゃった」
思わず笑ってしまった。まるで、仲の良いカップルのようだ。
私的には、恋愛感情はあるようなないような、微妙な立ち位置。良太郎はどうなんだろう。でも、さすがに訊くことはできない。恋愛感情があると言われたら嬉しいが、ないと言われたら気まずくなるから。だから、もっと時間をかけて接していこうと思う。その方がより、お互いの気持ちが寄り添うだろう。慎重に接していこうと思う。失敗はごめんだ。
花火大会の締めの花火が打ち上げられた。何百発と一気に轟音のような音をたてながら終えた。すると辺りから拍手などで声援をあげる人たちがいた。
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