最終話 気持ちの確認
花火大会も終え、
「さて、どうしようか」
と良太郎は言うと、私はあることを思い出した。
「良太郎は料理できる?」
彼は私を見て、
「ぼくは料理は好きだよ」
お! きた。良太郎はイケメンだし、仕事も上役で安定しているようだし、何たって、料理ができる、というところが大きい。私はあまり得意じゃないし、好きじゃないから。
よし、条件は揃った。あとはお互いのことをどう思っているかが問題。私はもちろん嫌いではない、寧ろ徐々に好意的になっていくのが自覚できる。 訊いてみようかな。
「じゃあ、良太郎の手料理が食べたいな」
「今から?」
ああ、手料理を振舞うには遅いか。
「今度、時間のある時に食べたいな。だめかな?」
「いや、駄目じゃないよ。寧ろ、美鈴にぼくが作った料理を食べてもらいたいよ」「へえ、そうなんだ。自信あるんだね。凄い」
そう言うと彼は苦笑いを浮かべて、
「いやあ、そんなに自信があるわけじゃないよ。でも、美鈴には食べてもらって感想を聞きたい。凄くもないしね」
感想を聞きたいだなんて、まるで、料理学校で試験を受ける生徒のようだ。
「明日ならいいけど」
良太郎はそう言うと私は、
「最近、毎日会ってるね」
「う、うん。だめかな?」
彼は私にそう言われて狼狽えているように見える。
「いや、だめじゃないよ。良太郎といると楽しいし」
そう言うと彼は、
「そうなんだ。そいつは嬉しいことを言ってくれる。ぼくも美鈴といると楽しいよ」
私は良太郎の話しを聞いて質問してみようと思い言った。
「良太郎は私の事どう思ってる?」
彼は驚いた表情で私の顔を見ながら言った。
「それを訊く?」
「う、うん。だめかな」
「いや、だめじゃないけど、ぼくの気持ちを訊いて美鈴の気持ちを変えたりするつもり?」
私は良太郎の意外な発言に驚いた。
「いや、そういうわけじゃないよ」
「なら、まず美鈴の気持ちを言ってよ」
そう言われて心臓が高鳴った。そして、緊張してきた。でも、今、言わなければ。言うチャンス。
「わ、私は……良太郎のこと……す、好きよ。良太郎は……?」
私は赤面しているのを自覚した。両手を頬にあててみると熱くなっていた。恥ずかしい。
「ぼくは……ぼくも……美鈴のことは、す、好きだよ。だから、付き合って欲しい」
彼は私が言おうとしていたことを言った。
「もちろんだよ。よろしくね」
私は嬉しくて嬉しくて、涙が出てきた
。「ぼくの方こそよろしく。この気持ちをいつ言おうかタイミングを計ってたのさ」
こうしてお互いの気持ちも確認できたし、お付き合いも始まった。幸せになれるといいな。そう思い私は良太郎と見つめ合っていた。
了
【連載小説】気弱な私の日常 遠藤良二 @endoryoji
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