第4章 2話 プレゼント

 今夜も落川良太郎さんと会った。


 彼は私の家に着くなり、チャイムを鳴らして私が出た。玄関で返事をした。

「はい!」と。

 すると、「落川です」

 と言うのでドアを開けた。私は、

「こんばんは」

 挨拶をすると彼も、

「どうも、こんばんは」

 笑みを浮かべて接してくれたので、私も釣られて笑みを浮かべた。落川さんは余裕の表情に見えるけど、私は昨日と変わらないくらい緊張している。気が弱い私はこれだから困る。これが私の持った気性だから簡単には変えられない。でも、いつでも行けるように準備はしてあったから、彼を待たせるようなことはなかった。 父は帰って家にいたので、父も玄関に出て来た。

「お疲れ、落川くん」

 と彼に声を掛けると、

「あ、これはどうも。お疲れ様です」

 恐縮している様子。年齢は父の方がもちろん上だが、地位は彼の方が上で上司に当たるらしい。

「娘をよろしくな」

 父が笑みを浮かべてそう言うと落川さんは、

「はい! わかりました」

 と礼儀正しく答えていた。私は、

「じゃあ、行ってくるね」

 と父に手を振って彼と一緒に家を出た。 

 まずは食事をした。私はお腹が空いていた。落川さんは、

「何か食べたいものある?」

 昨日会ったからか、私にため口で話している。私としてはその方がいい。だから私もため口でいいかなと思い、

「ハンバーグが食べたい」

 と言った。

「実はぼくもハンバーグ食べたいなって思ってたんだ」

 私は、

「へえ、そうなんだ。奇遇だね」

 彼は、アハハと笑っていた。それから、

「この街で食べられるハンバーグ屋さんにする? それとも隣町にあるお店にする?」

 私は隣街のハンバーグ屋さんのは食べたことがないので訊いてみた。

「落川さんは、どちらの方が美味しいと思う?」

 彼は考えている様子で答えた。

「うーん、味は隣町の方が旨いかもしれないけれど、着くまでに1時間くらいかかるからあまり時間がないね」

 私は少し残念だったけれど、

「じゃあ、隣町のお店は時間のある時に行きますか。今日はこの街のハンバーグ屋さんにしますか」「そうだね」


 ハンバーグも言うほど不味くはないし、寧ろ美味しかった。

 時刻は8時を少し回ったところ。私は服が欲しいと思った。22時まで開店している大型スーパーに行きたいと言った。落川さんは、

「うん、いいよ。行こう。何が欲しいの?」

「洋服が欲しくて。ツーピースね」

「へえ、今着ているのはワンピース?」

「そう」

「お洒落さんだね」

 彼に褒められて私は嬉しくなった。

「ありがとう」

 とお礼を言った。


 落川さんの車で十二、三分くらいで大型スーパーに着いた。2階にある婦人服コーナーに行き、小柄な私のサイズに合うピンクのツーピースを見付けた。私は、

「これにする!」

 と決めた。

「じゃあ、ぼくが買ってあげるよ。渡して」

「いやいや、いいよ。悪いじゃない。自分で買うから」

 すっかり恐縮してしまった。

「いいから、今回はぼくに買わせて。初めてのプレゼントとして」

 私は返す言葉を失った。彼は優しくツーピースを私の手から取った。

 会計を済ませ店員は、

「プレゼントですか?」

 と訊いてきたので、落川さんは、

「はい」

 端的に答えた。店員は、

「プレゼント用の袋に入れますので、三百円追加となります」

 彼は、

「はい、いいですよ」

 と丁寧な口調で言った。店員は手早く袋詰めしてくれ彼に手渡した。そして落川さんは私に、

「はい、プレゼント」

 と言い渡してくれた。私は嬉しくなり、

「ありがとうございます!」

 頭を下げてお礼を言った。


 今回、彼と会って遊んだ内容はこんな感じ。

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