第4章 1話 お洒落したい

 ホテルの事務の退勤時間は午後6時30分。8時間勤務。私と同僚の柿谷早稲は正社員。


 私は早稲にお昼休みの時間に落川さんのことを暴露した。

「イケメンで、高収入らしい」ということも。

「最初は会う前から毛嫌いして、お父さんにすぐ断って貰おうと思っていたけれど、実際、会ってみたら気持ちが変わった。気遣いも出来る男性みたいだし」

 早稲には思ったことを話した。 早稲は、

「それなら良かったじゃない」

 と言ってくれた。正直、嬉しかった。

「あたしは、最近、彼氏と会ってないなぁ。別に嫌いになった訳じゃないけど、彼氏の方からも連絡ないし。こっちからばかり連絡してて、それが当たり前になるのが嫌なの」

彼女も暴露してくれた。そうかぁ、あまり会ってないのかぁ。上手くいってないとは言っていなかったから、そんなことはないのだろう。

「まあ、上手くやって幸せになってよ」

 と早稲は言っていた。

「ありがとう。早稲もね」

 私はそう伝えた。でも、彼女からの返答はなかった。


 時刻は午後12時30分。先輩から、

「山内さん、休憩入っていいよ」

 と言われ、早稲に、

「お疲れ様、休憩入るね」

 と声を掛けてから、休憩室に向かった。このホテルは五階建て。そこは二階にある。職員は階段で行く事になっているので、そこまでいつも歩いて休憩に入っている。ロッカーも同じ場所にある。


 お弁当を持って来ているけれど、母に作って貰ったもの。本当は早起きして自分で作れば良いのかもしれないけれど、母も6時には起きているので、作る時間が被るので、母はついでだから作ってあげる、と言ってくれていてそれに甘んじている。


 私もそれほど好き嫌いがないので、作りやすい、と母は言っている。良かった。私もいずれ誰かと結婚したいから、その時になったら嫌でも作らなければいけなくなる。旦那さんになる人が料理も出来るようなら一番良いんだけれど。果たしてそういう人と巡り会えればいいな。昨日知り合った落川良太郎さんはどういう男性なのかはまだまだ分からない。だから、料理を作れるかその内質問してみよう。昨日会ったばかりで、今日質問して、作らないと言われたら、残念だから。まあ、早い話し料理が出来る男性が良いと思っているという事。


 今日は凄く天気が良くて、日射しも強い。だから、一応日焼け止めクリームを入念に塗って来た。事務員は室内でする仕事だからと油断しては駄目。帰りに買い物をしたり、用事を足すのに外に出ないといけない時があるから。そもそも、職場まで行くのに必ず外に出るから。


 今日の仕事も終えて帰宅した。昨日と同じように落川さんに会う支度をして来るのを待っていよう。いつものように、まず、シャワーを浴びてから半袖で水色のワンピースに着替えた。男性とデートしてまだ2日目だけれど何となくお洒落したい気分になった。給料が入ったら洋服を買いに行こうと思った。

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