第3章 4話 寝坊

 今夜は、興奮しているのか、なかなか眠れない。困った。明日も仕事だというのに。いまの時刻は、午前2時過ぎ。起床時間は、午前7時半。この時刻にアラームをかけてある。興奮する原因は、落川さんのことだと思う。日をまたいだので、今日も彼と会う約束をしている。


 それからようやく寝付いたのは、午前3時半頃。目覚めたときは、凄く眠かった。なので、二度寝をしてしまい、母に起こされるまで寝てしまっていた。母は言った。「寝坊をするなんて、美鈴にしては珍しいじゃない」

「……ん。なかなか寝付けなかった」

 私は眠い目を擦りながら言った。

「彼のことを考えていたの?」

なんでわかるんだろう、さすが母。

「うん、なんか興奮しちゃって」

 と私が言うと、母は笑った。

「あなたは、久しぶりにデートしたからじゃない?」

そう母が言うと私は、

「そうかもね」

一言そう言った。

 兄にも話しかけられた。

「男にうつつを抜かすなよ」

 そう言われて私は苛っとした。なので、私は言い返した。

「彼女のいないお兄ちゃんに言われたくないよ!」

 すると兄は、

「そういう言い方はないだろう。おれは、間違ったことは言ってないつもりだが」 

 確かにそうかもしれない。なので、黙っていた。兄は私を見詰めていたが、いずれ目線を逸らし自分の部屋に行った。


 私は母に言った。

「何か、お兄ちゃん、感じ悪いね」と。

すると母は、

「うーん、悪気はないんだろうけど、言い方がね。お兄ちゃんもぶっきら棒だから。だから、気にしないほうがいいよ」

 そう言われたが、私は納得がいかなかった。でも、まあいいや、と思うことにした。あんなんだから彼女できないんだ、お兄ちゃんは。そう思った。


「早くご飯食べちゃいなさい。お母さんは今日、仕事だから。食器洗いしときなさいよ」

「えー、面倒くさい」

 私は駄々をこねた。

「子どもみたいなこと言わないで洗いなさい」

 と母に命令された。

「わかったよ。洗えばいいんでしょ、洗えば!」

 強い口調で言い返した。

「じゃあ、仕事行くからね」

 時刻は8時半過ぎ。母の勤務している花屋さんは、9時開店。今日はその花屋さんの売り出しの日らしい。居間のテーブルの上にチラシが上がっている。私は、独りで朝ご飯を食べ始めた。おかずはスクランブルエッグにウインナーとお味噌汁。母が作るおかずやお味噌汁はいつも美味しい。 お父さんはすでに仕事に行っていない。兄はどうなんだろう。兄は、缶詰を作る仕事をしている。製造業のよう。

 ご飯を食べたあと、シャワーを浴びた。私は9時半までに出勤すればいいから、少しだけ余裕がある。浴室から上がって、ホテルの事務員である私は制服を着て出勤した。

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