第3章 1話 初対面

 私は再度シャワーを浴びた。母に声をかけられた。

「美鈴、炒飯食べてから行く? 一人分余っちゃって。それとも、落川さんと一緒に何か食べるの?」

「いや、お父さんからはそういう話しは聞いてない。迎えに来るとは言ってたけど」「そうなんだ、それじゃあ食べてからいったらは?」

 私はどうしたらいいかわからなかったが、とりあえず食べることにした。


 食べたあと、歯を磨き、落川さんが来るのを待った。私は、居間の2人掛け用のソファに座った。母は私の隣に座り話しかけてきた。

「落川さん、どんな人だろうね」

「うん、お父さんは優しい男だと言ってたけど」

「あんたは、会ってみたいんでしょ?」

 私は頭を左右に振りながら、

「いや、ぶっちゃけ会いたくない。お父さんが、会いもしないで断るのは失礼だろ、と言うから会うだけ」

「あら、そうなの。その話は初耳だわ」


 私は会って、帰ってきたら父に断って欲しいと言おう。母は言った。

「意外といい人かもよ?」

 私が黙っていると、

「まあ、あんたは小さいころから人見知りが激しかったからね」

 そう言った。私は俯いていた。


 そして私は口を開いた。

「友人の友達とかならいいけど、お父さんの上司の息子ってなんか、プレッシャー」 母は、「うーん」 と唸りながら、言った。

「まあ、その気持ちもわからなくはないけど、断ればいいだけの話しだから。それに断るのもあんたじゃなく、お父さんだからそんなに重く考えることもないかもよ」 私はまた黙り込んだ。母のように軽く考えられたらこんな気持ちにもならないのに。どうして私はこうなんだろう。自分が自分で嫌になる。でも、仕方ない。25年間こういう考え方で生きてきたから、急には変えられない。ただ、環境に寄っては変わるかもしれないけれど。


 時刻は午後12時30分になった。落川さん、何時頃来るんだろう。午後からという話しにはなっているけれど。緊張してきた。


 そして、更に30分後の午後1時きっかりに家のチャイムが鳴った。母は、

「落川さんじゃないの?」

 私を見ながら言うので、玄関に向かった。「はい」 と返事をすると、「落川ですが」 母の思った通り。「はい」 と言って、玄関のドアの鍵を開けた。そして、ドアを開けた。私は緊張が更に高まった。

「こんにちは」

 と笑みを浮かべながら私を見ていた。私も、「こんにちは」と挨拶をした。お父さんが言うように、目が細くてシャープ。鼻は高く、唇は薄い。口は小さかった。短髪で爽やかな感じがした。

「美鈴さんですか?」

「はい」

「落川です。落川良太郎です」

「どうも」

 私は小さくお辞儀をした。

「美鈴さんのお父さんの言う通り、素朴でかわいい感じの女性だ」

 と落川さんは言った。初対面でよくそんなことが言えるな。私は、

「ちょっと待ってて下さい」

 そう言い私はバッグを取りに居間に戻った。母に行って来るね、と伝えた。笑みを浮かべた母は、

「うん、行ってらっしゃい」

 と言ったあと私はきびすを返した。正直、不安な気持ちもあった。初対面だからどんな人かわからないから。

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