第2章 5話 私の家の日常

 シャワーから上がった私は用意してあったバスタオルで体を拭き、下着を身に着け、半袖の茶色のワンピースを着た。落川さんにしっかりした印象をもってもらいたくて地味な色を選んだ。以前母が、

「地味な色はしっかりしてる印象を与えるのよ」

 と言っていたから。


 私は自分の部屋でドライヤーで髪を乾かし、肩まである黒髪を櫛でとかした。我ながら綺麗な直毛。真ん中から髪を分けてブラッシングした。レモンスカッシュの香水を上半身と下半身にかけ過ぎないようにワンプッシュずつかけた。いつも持ってる黒いバッグに財布、スマホ、家の鍵を入れた。


 家を出る時、母に、

「行って来まーす」

 と声を掛け出掛けた。


 早く車の免許が欲しい。そのためには、お金を貯めないと。歩いて銀行まで行く。


 外は天気が良く、日射しが強い。この分だと、また汗かいちゃう。落川さんにも会うというのに。もし、汗をかいたらウェットティッシュで拭こう。


 20分くらい炎天下のなか歩いてようやく銀行に着いた。なかに入り、入り口付近に設置されている番号札の機械から紙を一枚抜き取った。25と書いてある。25番目ということ。受付の電光掲示板を見ると、21番と表示されている。私の番までもう少し。


 30分近く待ったかな。ようやく電光掲示板に25番が表示されたので私は窓口に向かった。そして、口座をもう一つ作りたいという話しをした。そのための手続きをした。


 通帳はすぐにできたが、キャッシュカードが郵便で家に届くまでに1週間くらいかかるらしい。


 私は新しい通帳に今月分として一万円を入金した。それから帰宅した。


 やはり汗をかいてしまったので、さっきはウエットティッシュで拭こうと思っていたけれど、時間があるのでもう一度シャワーを浴びることにした。


 母の予定を訊いていなかったけど、家にいるので仕事は休みのようだ。母は花屋さんの店員をしている。花が好きらしく、それがそこで働くきっかけとなったと前にそういう話しを聞いたことがある。


 今日のお昼ご飯は炒飯のようだ。匂いでわかる。母のそれは美味しい。インスタントラーメンと一緒に食べるととても美味しい。今日もそのメニューのよう。今は夏なので暑い。暑いときに熱いものを食べると美味しいと父が以前言っていた。また、汗をかかないか気になるけれど。


 そういえば、兄の黒い乗用車がある。今日は仕事が休みのようだ。母は、

「美鈴、浩紀を呼んできて。多分、まだ寝てると思うから」

 そう言われ、2階のお兄ちゃんの部屋に行ってドアをコンコンとノックした。部屋のなかから音が聴こえる。何の音だろう。お兄ちゃんは返事をした。「はい」と。私は、

「開けるよ」

 と言ってからドアを開けた。するとお兄ちゃんはゲームをしていた。お兄ちゃんは言った。

「どうした? 朝飯か?」

 どうやらゲームに夢中になっているようだ。私は言った。

「ご飯だよ」

「おれ、いらないわ。母さんにそう伝えておいてくれ」

「わかった」


 私は思った。せっかく母が作ったのに食べないなんて。一応、母に伝えよう。私はキッチンに行き母に、

「お兄ちゃん、ご飯いらないって」

 すると母は、

「え? 何で?」

「わかんない」

 そう言ったあと母は階段の下から叫んだ。

「浩紀! ご飯食べなさい! せっかく作ったんだよ!」 するとお兄ちゃんの声が聞こえた。「いらないってば!」


 母は独り言を言っていた。

「まったく、仕方ないわね」と。

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