第2章 4話 一人暮らしをしようとしている私

 金曜日になり、私は朝8時ころアラームをかけて起きた。すでに母は起きていてキッチンにいた。

「おはよう」

 と私は母に言い欠伸をしながら洗面所でうがいをし、顔を洗った。

「美鈴、おはよう。今日午後から会うんだって?」

「うん、お父さんから聞いたの?」

「そうよ。お父さんしかいないじゃない」

「まあ、そうだね」

 母から突っ込まれて私は苦笑いを浮かべた。たまに突っ込んでくる。そのたびに私は苦笑いを浮かべて微妙な気分になる。まあ、いいけれど。それくらいで私は怒ったりしない。大好きな母だし。母もきっと私のことが大好きだと思う。訊いてはいないけど、きっとそうなはず。そんなことイチイチ訊けない。恥ずかしいし。母に声をかけられた。

「美鈴、ご飯よ。おじいちゃん、おばあちゃんも。浩紀ひろきは部屋にいるのね」

 おばあちゃんは返事をした。

「うん、わかった」

 テーブルの上を見ると調理された食べ物が載せられていた。目玉焼きにお豆腐とわかめのお味噌汁、それとライス。お父さんの姿がないので、もう仕事に行ったのだろう。祖父母はゆっくりとキッチンに向かった。母は、階下から二階の部屋にいる兄の浩紀に、

「浩紀ー! ご飯よー! 起きなさーい」

 だが、返事がない。熟睡してるのかな。最近、お兄ちゃん、仕事がめっちゃ忙しいみたいなこと言ってたから、疲れて寝ているのかもしれない。

 母はキッチンに戻ってきてこう言った。

「お兄ちゃんは多分寝てるわね。起きてきたらチンして食べると思うから放っておこう」

 私は母に言った。

「この前、私がお兄ちゃんの部屋に行った時、声をかけたんだけど、疲れてるから寝かせてくれ、と言ってたよ」

「うん、お母さんにも言ってたよ」

「そうなんだ」

 母は私に言った。

「さ、冷めないうちに食べちゃお。あんた、確か銀行に行くって言ってたよね」

「うん、そう。もうひとつ口座作ってくる。そこに毎月決めた金額を貯金しようと思ってね」

 私と母は食べながら話している。

「そう。それは偉いわね」

「お金貯めて一人暮らしをしようと思ってね」

「え、そうなの? あんた一人暮らしできるの? 部屋のこと全部自分でやらなくちゃいけないのよ? それに仕事もしてだよ」

 私は言い返した。

「お母さん、私のこと馬鹿にしてるの? それぐらいできると思う。できないときは、お母さんに来てもらう」

 そう言うと母は、

「それじゃあ、だめよ。まあ、呼ばれたら行くけどね。仕方ないから」

 私は言った。

「少しくらい力貸してよ」

 母は、「まあ、そこがあんたの気の弱いところね。いいよ、電話してきなさい」

「ありがと」

 私は歯を磨き、自分の部屋に戻ってから黄色いパジャマから黄色いTシャツとジーンズ生地のホットパンツに着替えた。シャワーはいつも前の晩の寝る前に浴びている。それでも少し汗臭いかな、と思ったから下着と今着替えた服などとバスタオルを持ち、浴室に向かった。脱衣所に干してあるマットを敷き、ボイラーの温度を42度に設定してから浴室に入りシャワーを浴びた。

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