第2章 3話 紹介

 お父さんの上司の息子さん。断ったらどうなるの? 私は訊いてみた。

「会わずに断るのは失礼じゃないか? せめて会ってから決めて欲しいな」

 あんまり会いたくないのが本心。でも、お父さんの立場も考慮して会ってみるかな。そう思ったのでお父さんに伝えた。

「ありがとな。でも、嫌なら断っていいから」

 私は大きく頷いた。断る気満々。


「じゃあ、会ってあげるから設定して? 名前は何ていうの?」

 父は言った。

「名前はな、確か、落川良太郎おちかわりょうたろうだったかな」

 私が言ったのは、

「そうなんだ。私の名前は知ってるの?」

「言ってはあるぞ、忘れていなければいいのだが……」

「そう、わかった。あと、何時にどこで会うか教えてね」

「わかったよ」


 その日の夜。父が帰宅し、私を呼んだ。

「美鈴ー、ちょっと来てくれ」

 階下で声が聞こえた。

「はーい」


 私は読書をしていたので、しおりを挟んだ。因みに小説を読んでいた。高校時代に親に買ってもらったテーブルを使って。父が私を呼ぶなんて滅多にないからきっと今朝の話しだと思う。


 階下に繋がる階段を降り、居間に行った。父はいつの間にか帰宅していた。いつものことだけれど。私はソファに座り、

「今朝の話し?」

 と言われる前に言った。

「お、そうだ。よくわかったな」

「それくらい察しがつくよ」

 そう言うと、父は苦笑いを浮かべ、

「そっか」

 と言った。


 父が話し始めた。

「美鈴の次の休みはいつだ?」

「今週の金曜日だよ」

「そうか、先方はいつでもいいらしい。全面的にこちらに合わせてくれるみたいだ」「そう。私、金曜日の午前中に銀行に行こうと思ってるの。だから、午後一ならいいよ」

「わかった、伝えておくわ」

「迎えに来てくれるの?」

「ああ、家に来てくれるみたいだ」

「なら、よかった」


 すぐに断ろうとしているのに、なんだか気持ちが上昇している。おじさん相手に何をそんなに浮かれているんだ。


 そう思っても、会うだけ会ってみたい、という気持ちがある。画像を見る限りでは、イケメン。性格は聞いた限りでは優しいらしい。もし、私が気に入ったら、2回目も会うかもしれない。まずは、一度、会ってみてからの話し。


 仕事の方も今はスーパーマーケットで勤務しているけれど、いずれは正社員になりたいと思っている。ただ、転勤がある。だから、思案中。転勤のない職場に転職するかもしれないし。


 あと、彼氏も欲しい。今回会う人とどうなるか。もし、無理だったら友達から男性を紹介してもらうか、マッチングアプリで出会いを求めるか、どちらかだろう。

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