第2章 2話 実家での出来事

 実家に着いた私は居間に行き、兄を探した。兄の部屋にも行ってみた。でも、いない。どこに行ったのかな。ウロチョロしていると父が私に声をかけてきた。


「美鈴、来てたのか。来てたなら何か言えよ」

「ああ、ごめん。お兄ちゃんは?」

 父に訊いてみると、

「自分の部屋にいないか?」

「うん、いない」

「何か、用でもあるのか」

 私は兄に会いたい、でも、そんなことは恥ずかしいから言えない。

「いや、ないけど」 立っている私に父は、

「なら、座れよ。落ち着かないだろ」

 そう言われ私は何も言わずその場に胡坐をかいた。その時、母が外から家の中に洗濯物を持って入ってきた。乾いたから取り込んできたのだろう。


「あ、美鈴、来てたのね」

「うん」

 と頷きながら私を見ていた。

母は洗濯物を居間にある白い2人掛け用のソファに置いて、洗濯物が入っていた大きなかごを洗濯機の傍に置きに行った。実はね、今日あんたに来てもらったのはね、母は父の方を見て、

「あとはお父さんに任せた」

「なんだ、お前の方から説明してもよかったんだぞ」

「いいからお父さんの方から話してよ」

 父はそう言われ、私の方を見た。

「話しっていうのはな、俺の上司の息子をお前に紹介したいと言われたんだ」

「え。マジ?」

 私は、驚いた。まさか、そんな話しとは思ってもみなかった。

「どうだ、嬉しいか?」

 父はニヤニヤしながら言った。私は、

「というより、びっくりした」

「そうなのか」

 父は言い、苦笑いを浮かべた。母は父に言った。


「お父さん、スマホに写真入っているでしょ。見せてあげたら?」

 そう言われ、父は自分の黒いスマホを充電器から外し、画像を開いて見せてくれた。するとその男性は、目が細くてシャープ。鼻は高く、唇は薄くて小さい。華奢な体つきをしている。私は父に訊いた。

「何歳?」 

父は思い出そうとしているのか、頭を傾げた。

「確か、33とかじゃなかったかな」

「え! 私より8つも上じゃん」

 父は私に訊いた。

「嫌か?」

「嫌っていうか、おっさんでしょ!」

 すると、椅子に隣同士に座っている祖父母までが笑い出した。父は、

「父さんや母さんまで笑うことないだろ」

 父はムキになって言った。 

 祖母は、

「だって面白いじゃない、今の美鈴の一言」

「確かに」

 と祖父。


 私は、

「でも、イケメンだね。おっさんだけど」

「だーかーらー! おっさんは余計だっつうの!」

 父は懸命に上司の息子をかばった。 今度は母も加えて爆笑した。

「お前までも笑いやがって!」

「ごめん! つい、笑っちゃった」

 と母は口を抑えて言った。


 でも、父はそんなことも気にせずに私に話しかけた。

「性格は至って温厚らしいぞ、優しいようだし」

「そうなんだ」

 と言うと父は、

「どうだ? 会って見る気はないか?」

「みんなの笑いものになっているのに?」

 私がそう言うと、

「それは関係ないだろう」

 父は言った。怒らせてしまっただろうか。まあ、自分の上司の息子だから悪く言われたくないのかな。娘の方が大切じゃないのかな。そんなことを私は考えていた。

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