第1章 4話目 引っ込み思案な私
翌日、仕事を終え、私は柿谷早稲からのLINEを待っている。今日は遊ぶ約束をしている日。カラオケに行く予定。
どうも、私はあまり自分から連絡をとれない。親や兄妹ならいいんだけれど、友達にはよほどのことがない限りLINEはできない。
引っ込み思案というのか、消極的というのか。もっと、積極的になりたい。自分から男性、女性限らず連絡をとってみたい。どうやったら、この性格を変えられるのだろう。
そのようなことで悩んでいると、LINEの着信音がピロリンと鳴った。開いてみると、早稲から。本文を見てみた。
<今から迎えに行くけど、支度はできてる?>
私は準備万端なのでこう送った。
<できてるよ>
短文だった。
<じゃあ、今から行くね>
それでLINEは終わった。
それから30分くらいしてから、早稲から電話がかかってきた。
「もしもし」
『着いたよ』
「わかった、今行くね」
私はショルダーバッグを肩にかけ、部屋を出た。玄関のドアを閉め鍵をかった。向かいの道路沿いに黒い軽自動車が停まっていて、早稲がこちらを見ながら笑顔で手を振っている。私も笑顔ではないが、手を振った。
道路を渡る際に左右を確認してから渡った。以前、隣家の人がこの道路を渡る時に左右を確認しないで渡ったら右側から車が猛スピードで走ってきて引かれたという事故があった。その人は、頭を道路に強く打ち、亡くなった。
私はその事故の人ようになりたくないので、必ず左右を見てから道路を渡ることにしている。亡くなったと聞いた時、とてつもない恐怖に襲われた。
早稲の車の助手席に乗ろうと、ドアを開けた。彼女は、
「ういーっす」
といつものように挨拶してくれた。私は、
「こんばんは」
普通の挨拶をした。
私のイメージとしては、早稲は、割とヤンチャな部分があると思う。短気というか。彼女は言った。
「あそこのカラオケボックスは飲み物を持ち込んでもいいから、コンビニで何か買ってから行こうか」
私は、
「そうだね、そうしよう」
と言った。
「杉田にあんなこと言われて大丈夫? 気にしてるよね」
私は言った。
「うん。気にしてる。少し、落ち込んでる」
早稲は、
「あらら、そっか」
私は、頷いただけ。彼女は、
「杉田の野郎! ムカつく! あたしの大事な友達に!」
と言ってくれた。少し嬉しい。
「ありがとね、私のために怒ってくれて」
私がそう言うと、
「そりゃ、怒るよ!」
「ありがとう」
早稲は、
「美鈴はムカつかないの?」
と言われた。私はこう言った。
「ムカつくけど、すぐにしゅんと、しちゃう」
早稲は、
「そうかぁ、もっと怒っていいんだよ。でも、美鈴はそういうタイプじゃないもんね。大人しいから」
私は黙っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます