第13話 アプローチ

Mプロが発足してまもなく、また本木一也がトヨタ織機本社に電話してきた。もちろん、今度も豊雅年社長に対し大株主としての存在感を示して、買い戻しさせるのが狙いだ。一回目は、総理大臣まで介入してもらい買い戻しを成功させたことを、本木自身も柳川会から聞いて知っていた。今度もうまく行くはずと読んでいた。なかなかトヨタ織機から電話がないので業を煮やして本木がまた電話したのだ。弁護士団との打ち合わせどおり、吉田副社長が出た。「副社長の吉田といいます。社長は不在なので私がご用件を賜ります。」とソフトな口調で応対した。「実はお宅の株を集めています。ご挨拶にと思って電話しました。」と本木一也は吉田に言った。「そうですか。」と言ってそれ以上吉田は話さない。そこで本木は「日本現代企業株式会社と吉本興産株式会社という名前で集めています。2社でもう7%を超えると思いますが。」とふてくされ気味に言った。「そうですか。」と今度も吉田は動じない。最後に本木が「豊社長によく言っておいてくれ。」といって憮然として電話を切った。本木は今回は会社の対応が違うと感じた。どうやってもっとプレシャーをかけて行こうかと思った。


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