角ある神の呼び声
①
12/31 今年も、もうすぐ終わりだ。(中略)数人の生徒と道端であった。なにやらオーライ?とかいう催しに参加するらしい。この寒いのに上着も着ていなかったが大丈夫だろうか。風邪をひかないといいのだが。そういえば珍しいことに全員黒い服を着ていたがその催しとやらと関係があるのだろうか。そろそろ始業式の…
1/6 気がつけばもう3学期か。この一年、大変なことも多かったが楽しかった。生徒たちも信頼してくれているという自負もある。感慨深い。あっという間の一年だった。進級の際は泣かないようにしなければ。大体、まだ小四なのだからあと二年はいつでも会える。生徒たちから…
1/10 …そういえば最近、私のクラスで鬼ごっこが流行っているようだ。放課後も十数人が校舎裏に集まって毎日楽しそうに遊んでいる。ただ、校舎裏は山に面している。大丈夫だとは思うが念のため山には入らないように言っておこう。たまにクマや猪が出るとも聞くし。
1/11 …子供たちの鬼ごっこはどうやらかなり人気らしい。しかも本格的なことに鬼役の内の一人は節分で使う赤鬼の仮面を被っているようだ。微笑ましい。子供たちを見ていると不思議と元気が湧き出てくる。
1/12 …面白いことに気が付いていた。鬼の仮面に開けられた除き穴の下それぞれにサインペンか何かで塗りつぶされた黒い丸が書いてある。明日生徒たちに聞いてみよう。
1/13 あの黒い丸はどうやら目らしい。目が二つより四つの方がよく見えるでしょ?と言われた。子供というのは不思議なことを考えるものだ。想像力に満ち溢れている。今日の算数の授業でも…
1/16 …いつのまにか参加している人数が増えている。正確に数えたわけではないがクラス全員が参加しているのではないか。四年生ともなると男女を意識しだして一緒に遊ばなくなる場合もあるがうちのクラスの子たちは本当に仲が良い。
1/17 …例の鬼ごっこで皆が仲良くなったからか最近は喧嘩や口論も見なくなった。そのおかげかはわからないが授業中も真面目に聞いているようだ。元気なのはよいことだが授業中に少し喋りすぎではないかと心配もしていたので何より。休み時間には楽しそうに話している。今日は…
1/19 …最近流行っている鬼ごっこだがよくよく見ると鬼の面をつけた生徒が追われている。休憩がてら職員室から見ていたのだが、どうやら鬼の面をつけた生徒と黒い紐を手に巻いている生徒を他の者たちがタッチして捕まえるというルールらしい。鬼の面の生徒がタッチされるとそこでゲームは終了のようだ。しかしすると黒紐の生徒は何をするのだろうか。明日よく観察してみよう。最近鬼ごっこを見ている時間が増えている。教務にも集中力が欠けていると注意された。反省しなければ。しかし子供たちの楽しんでいる姿を見ていると仕事をやる気力も湧いてくるというものだ。
1/20 …おそらく黒い紐の生徒は鬼を守るのが役目で、タッチされたり身体のどこかが追手と当たると追手側になる。ただタッチされた後すぐ追手になるのではなく地面に何かを埋めた後になるようだ。また紐を巻いた生徒にタッチした生徒も同じことをやらなくてはいけない。おそらくは鬼のすぐ近くでタッチされたときにすぐゲームが終わってしまうことを防ぐためだろう。子供たちが考えたにしてはなかなか上手く作られたように見える。やはり優秀な生徒たちだ。それにしても何を埋めているのだろう。週が明けたら聞いてみるとしよう。
1/23 とても残念な日だった。生徒たちに鬼ごっこで何を埋めているのかを聞いてみたところなんと川で取ってきた貝を埋めているというのだ。一応、枝を上に挿してお墓のようにはしているようだが遊びの為に命をいたずらに奪うなどあってはならない。生徒たちにはこんなことはもうしないように、また埋めた貝は掘り起こしてきちんと埋葬しておくようきつく注意した。最初はためらっていたが根気強く説き伏せたら納得はしてくれた。これを機に少しでも命の大切さを理解してくれたらいいのだが。私の生徒たちならきっとわかってくれると願いたい。
1/24 …生徒たちが何かを掘り返していた。おそらく埋めた貝だろう。どうやらちゃんと理解してくれたようでよかった。あの子たちならわかってくれると信頼はしていたがそれでも安心した。(中略)子供は時に残酷かもしれないが素直だ。だからこそ教師の責任はとても重いと思う。明日からも頑張ろう。あの子たちならきっと大丈夫だ。
1/27 …皆で貝を埋葬していたのかここ数日、例の鬼ごっこは行われていなかったがどうやら再開したようだ。貝はともかく、皆で遊ぶこと自体まで止めてしまったのではと少し不安に思っていたが安心した。しかし少々騒ぎすぎのような気もする。まあ子供なら…
1/30 以前は鬼の面をつけた生徒が追われていたが最近は普通の鬼ごっこと同じく鬼の面をつけた生徒が追手を務めている。鬼にタッチされた生徒は黒い紐を手首に巻いてまだタッチされていない生徒を追いかけて鬼がうまく捕まえられるよう協力するようだ。子供というものはどうも移り気で気に食わない。つい最近まで…
1/31 …それにしても授業中、生徒たちは陰気臭く黙りこくっていてばかりでどうにも薄気味悪い。そのくせ休み時間になると突然狂ったかのように騒ぎ始める。私に対する当てつけか何かなのか?本当にイライラする。
2/1 …例の鬼ごっこでまた生徒たちが訳の分からないことをしている。今度はトイレットペーパーの芯か何かを赤鬼の面の眼の部分に張り付けているようだ。視界が狭まって怪我をしやすくなるなどの危険を考えなかったのだろうか。何を考えているのか訳がわからない。気味が悪い。早く三学期が終わって欲しい。あと二ヶ月の辛抱だ。
2/2 …いつ何時、また訳のわからないことをやらかすか不安で監視していないと落ち着かない。最近だと業務の時間より鬼ごっこを監視している時間の方が長くなってきた。教務からも集中していないと注意された。あのガキどものせいだ。大体教務も教務だ。私は学校のためを…
2/3 もっとはやくとめておけば
長野県警 実況見分調書85614号
1996年2月4日未明、長野県木曽町蛇籠小学校の教師の遺体が山中で発見された。遺体が発見された地点は勤務先の学校の近辺であり、前日に当教師の担当していた4年3組の生徒全員が校舎裏で起きた土砂崩れに巻き込まれ亡くなったことからそれを悔やんでの事だと思われる。何かで縛られたような手首の環状鬱血痕が少々不可解ではあるが状況証拠からみて自殺の可能性が極めて高い。
平成8年(1996年)2月3日長野県木曽町で発生した土砂災害の現地調査報告
平成 8 年 3 月17 日 国土庁国土技術政策総合研究所
1.はじめに
平成8年2月3日に木曽町で発生した土砂災害においては、甚大な人的被害や建築物等の被害が発生した。国土技術政策総合研究所は当災害の原因および予防を目的として現地調査を実地した。
(中略)
5.結論
今回の土砂災害の原因は過去の複数回の豪雨により斜面表層下の土砂が流出したことで形成された大規模な空隙、空間の崩壊だと考えられる。
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