第4話 光芒キラキラ
''キイチは激怒した。''
激怒という程でもないがとても不機嫌であった。まるで安い水風船のように、つつけば簡単に破裂するほどには不機嫌であった。
初めから訳の分からないままやらされていた記憶巡りは、昨日ようやっと終えたはずだった。しかしそうではなかったのだ。
7つで終わりと聞いていたのにだ。
7つ目を終わらせた昨夜。もう1つあるから
心苦しいが向かってくれないか、と通告を受け
た。それは文面こそ謙っているもののできるのは僕しかいないし、やらないと言えば捕まえられて、やるまでカウンセラーを受ける羽目になるのだから、これは列記とした命令だろう。
そ8個目の記憶は今いる所からとても離れているそうだった。いつものように1日で行ける所ではなく、3日程かかるようだった。
「クソ、遠いじゃねえか畜生。」
いつもは移動は僕一人でやっていたのだが、今回は直属のドライバーが付くらしい。
それが益々僕の機嫌を逆撫でした。
下手で見え透いた機嫌取りのように感じたからだった。うだうだ抜かしていても仕方ないから
1日目はLを食べて自分の機嫌を取ることにした。
2日目、目覚めるとまだ車を走らせていた。
「おい。お前、まだ走ってたのかよ。」
「ええ、到着まで安全運転で参ります。」
「休憩も頼むよ、こんなときにみすみす死ぬ訳にはいかないんだからな」
ドライバーは源代と名乗った。
無口な男で、話を振ってもろくな返事をしないから心底僕と話をするつもりがないように思えた。
だが、その割にはバックミラーで僕のことをちらちら見てくるのだ。
気にしないようにしたり、逆に見つめてみたりしたが、埒が明かないので聞いてみることにした。すると、後続車を確認だ、僕が寝ていれば静かに走らねばならないからだと答えた。
パッとしないが、もう諦めることにした。
1日目に寝すぎたせいで、2日目は眠れない夜を過ごした。
ふと気がつくと眠っていて、3日目を迎えていた。
目覚めて窓を眺めていると、3日目にして突然無いはずの口が開いた。
「今よろしいですか。あの節はごめんなさいね。彼女を突然こちらに連れて行ってしまって。でも均衡のためにあのタイミングの彼女が必要だったんです。貴方を迎える準備が出来ましたから、もう暫くして、記憶について話しましょう。均衡について話しましょう。春Sについて話しましょう。そして彼女に会わせましょう。」
春S 水野千角形 @kakuseiki
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