第2話心二つ悲しみ一つ
ヂリヂリ…ヂリヂリ…ヂリヂ、パン!
3022号室。12:00
やかましい目覚まし時計を止めつつ、起きがけの二人はキスをした。
昨晩よりは少し控えめで優しい口づけは
二人の繋がりをより固くし、呼応するように木一のペニスは硬くなった。
2人を覆う厚くて空っぽな毛布の中、理左の手が
包むように木一のペニスをさする。
少し荒くなった木一の息を理左が吸い込む。
理左は木一の上に乗っかる。
理左は毛布の中ガサゴソ動いた後、
入れるよと囁いた。
さっきよりは少し荒いキスに、掠れた理左の
唸りと息が混じる。
木一がそれを吸い込みさらに硬くなると理左
の色々が満たされる。
「…ねぇ、今1番死にたくない。」
「…」
木一は全身に力が漲り息んだ。理左は木一の頬
を左手でそっと包む。
「…理左、いくよ。」
2人の頭に稲妻のように記憶がほとばしる。
〈…今日は晴れてて雲が綺麗だね木一。…そうだね。なんか絵画みたい!…理左はなんで僕がいいの?…聞く?それ。…いや、いいや、、でもね、僕今1番死にたくない……〉
「うん…。」
二人は起きがけよりさらに優しいキスをして、
倒れ込むように木一から降りた。
「ん…うるさい。もう13時?…キーチは?」
「あ、起きた?そろそろ行くから準備するよ。まずはシャワー行ってきな。」
「ん…わかった。」
寝ぼけてふらつきながらスタスタとお風呂場へ向かう。
風呂場の密閉性の高い扉は甲高い音を出しながら閉まった。ザーッとシャワーが流れる音は微かに漏れていた。
20分後にまた扉がキュッと音をしながら開き、
洗面台の方から湯気が天井を這うように溢れ出している。すると、キッチンの方から
「理左?上がった?もうそろご飯できるから着替えたらおいで。」
と木一が声をかける。
「はーい!」
理左は首にタオルをかけ、濡れたセミロングの髪を背中の方にさっと払って席に着いた。
「よし。召し上がれ。」
「モーニングって感じだね。美味しそう!
いただきまーす。」
ハムエッグ、四枚切トースト、熱いインスタントコーヒー。
「ミルクは?」
「いる」
「砂糖は?」
「いる」
「OK」
そういうと木一は軽いステンレスの椅子をすっと引いて、キッチンの方まで歩いていった。
「あ、コーヒー苦手だったっけ理左。
水あるけどいる?」
「ううん、いい。これ飲むよありがとう。」
「はい、ミルクと砂糖。」
「ありがとう」
外の鳥と咀嚼音が昼を奏でる。
先に食べ終わった理左は木一の目をじっと見ていた。
「なんだよ」
「ううん、なんでもない。」
続けて、「嘘。なんでもなくない、なんで昨日無視したの。」
「なにか無視したっけ?」
「『今1番死にたくない』って私言ったでしょ。木一その時何も言わなかった。どうして?」
「いや、とくに理由は無いよ」
「淋しかった。忘れたの?あれ木一が言ったのよ」
「忘れちゃったよ」
木一は咄嗟に嘘をついた。
あれを言った時木一は、理左という人間が自分の元から離れていく様を想像して辛くてたまらなくなった。だからこれ以上こんな想像はしないように、あの言葉を心根よりも深い、底の底に鍵をかけて仕舞った。
「洗い物は私がする。」
「いいよ、僕が…」
「いいから私にさせて。向こうで行く荷物まとめておいてほしい。」
2人はそれから何も言わず各々のやることをやった。
20分くらいして、
「理左、準備できたよ」
「理左、ごめん。」
「なにがよ。」
「本当は覚えてた。君を失うのが怖くなって逃げだした言葉なんだ。だから僕もだ、ってすぐ言えなかった」
「淋しかったよ木一。離れないよ。離さないでね。」
「うん。僕も死にたくないよ。愛してるよ、理左」
「私も。」
2人は抱き合って、眠る前より優しいキスをして
次の目的地に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます