1分の命

けんすけのり

1分の命

男は時計を見た。

午後11時59分。あと1分。


その部屋には時限爆弾が仕掛けられていた。誰かがやった。いや、もしかすると——自分自身かもしれない。


「起爆まで、あと60秒」


機械音声が冷たく告げる。


汗が額を伝う。目の前には赤い、青い、黄色いコード。どれを切ればいい? いや、そもそもこれは本当に爆弾なのか?


記憶が曖昧だ。今夜の会話も、来た理由も思い出せない。薬を盛られた? それとも——自分が、誰かの命令で仕掛けた実行犯?


「45秒」


迷っている時間はない。

赤か、青か、黄色か。

映画みたいに「赤を切れば止まる」なんて法則は、現実にはない。


「30秒」


心臓が喉元で鳴っている。誰かが笑っている気がする。いや、違う、自分の呼吸音か。


「20秒」


コードに手を伸ばす。選ばなければ、終わる。選んでも、終わるかもしれない。


「10秒」


赤を切る。


……


静寂。


モニターのカウントが消えた。


男は深く息をついた——と同時に、背後でカチリとドアが開いた。


「おめでとう。次の“1分”へようこそ。」


そしてまた、時計が動き出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

1分の命 けんすけのり @kensukenori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ