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石村まい

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食虫花 しずかに愛を話すときあなたは窓を見たりはしない


空耳の空をさまよう飛行機にあふれさせたい晩年の貝


開閉のむずかしいこと 六月の目蓋まぶたはひどく夢に渇いて


万華鏡をばらばらにするさびしさはあなたが獏を曳いてきたから


ふうん、と茶葉がひらいてからずっとその日を淡くする虹の雨


蜂蜜の冷えは白へと凝固して壺のかたちにみな老いてゆく


四季を追う人差し指に刃はつづき、ブラータチーズのなめらかな破裂


くちびるを氷に濡らすふたしかさだった星座を数えあうのは


うまれたての珊瑚の声をひきとめる胸にあまねく天国の塵


裸足なら呼べるとおもう地底湖がふたりの島になるための火を

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soif 石村まい @mainbun

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