第21話
素由の町並みは美しい。国興の昔から数百年、王都はここに置かれていた。
国土の拡がりに伴い、永楽への遷都が行われたのは二百と五十年ほど前のこと。
国史上、まだまだ素由のほうが都として在った時代は長い。そして都でなくなったが故に変化の波が寄せず、当代そのままの造りが残っていた。
緩やかな世相が窺える、円らかな町である。遡ったその時代の、ゆったり流れる時を見るようだ。
遷都のそのころは国としてもっとも成長したころでもある。武人気質の王の出現によりもたらされたその時代、国はかつてないほどの戦を経験した。
その王に造られた町なので、永楽の町は素由に対して硬質だ。受ける印象がまったく異なる。武骨な建造なのである。
最期。かつての栄光そのままに雅な姿をみせる州城――かつては国城――に、寛方は立て篭もった。
開けば終わりの近過ぎた反乱であった。交わされた理想論は空論と崩れ去り、集まった臣たちは散り散りに消えた。
無傷の昂鷲と創を負った寛方は、数年ぶりに向き合った。
やがて弟は州城の天守で、情けをかけられ自害したという。最期のときは二人きりで、側には誰もいなかった。
その場のことを誰も知らない。ただ、寛方は王家の墓所にねむっている。その死の理由にも拘らず。
首謀が討たれ、内乱は終結した。始まりから終わりまで約二週間。国の歴史を考えるに、あまりに短い叛だった。
王は村であった地を歩いた。炎の走った痕を追う顔に表情はないが、なにを思っているのか想像に易い。
後ろに控えた武官は顔を顰めてそれを見ていた。知らず歯を噛み締めている。痛みが翌朝まで残るほどに強く。
寛方は死した。王位を欲し起ち上がった、それがこの結果だ。いくつもの村を滅ぼした。
――この村も、すべての民が死んだ。起こってはならぬ戦であった。改めてそう嘆いたとき、王の背がふいに揺れるのを見た。
はっと思ったときには、昂鷲は崩れた壁に両手をかけていた。なにを、と問うのを遮り、鋭い声がとぶ。
「手を貸せ、龍岬(りゅうこう)!」
「は」
「生きている。早く!」
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