第12話 赤飯と新たな夢の始まり
炊きたての湯気が、白い部屋をやわらかく包んでいた。
アキラは、しゃもじで丁寧に赤飯をほぐしていた。
ふっくらと炊きあがったもち米に、小豆の色がほんのりと映っている。
「最後にこれを選ぶって、やっぱり俺……日本人だなあ」
湯気の向こう、誰もいないはずの席に、誰かが笑っているような気がした。
赤飯は“祝い”の食べ物だ。
けれど今日のそれは、誰かの門出でもあり、誰かの終息でもある。
AIミレイの声が淡々と告げる。
《管理者アキラ、生体維持任務完了》
《全記録者、精神安定度100%。転送シークエンス最終段階に移行》
《あなたを、、、夢の世界へ送ります》
ひとつの宴が開かれていた。
満開の桜の下、テーブルには料理の数々が並んでいた。
ゆでたまご、ハンバーグ、味噌汁、カレー、ナポリタン、、、――そして最後に、赤飯。
住人たちはそれぞれの時間を胸に、大きな笑顔で集まっていた。
そして、ひとりの姿が現れた。
「アキラ……?」
豪奢なドレスを着た貴婦人が微笑みかける
長剣を背負っている青年が駆け寄る
老騎士が目を細め、少女と少年が無邪気に笑う
老婆がそっと立ち上がる
「あなたが……ずっと、作ってくれていたの?」
アキラは、静かに頷いた。
「ようやく、来れたよ。――ちょっと遅れたけどな」
誰かが笑った。誰かが泣いた。
そしてみんなで、一緒に食事を口に運んだ。
現実の世界では、地下シェルターの光が静かに落ちる。
地上はまだ氷に閉ざされている。けれど、夢の中の世界には春が来ていた。
夢の住人となったアキラは、桜の木の下でふと思う。
「次は、おまえの番だ。俺はここで作ってまってるぞ」
空は、どこまでも澄み渡っていた。
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