第16話 聖女の騎士の人物評

 夕ごはんの前、聖女の騎士達が私の部屋に作った像は既になく、目に痛い配色の壁、床、天井と反して真っ白なベッドに身を沈める。


 結局、聖女の部屋と変わらない方が落ち着くのよね。

 ただ、壁、床、天井の色が物凄くうるさくて、ベッドも聖女の部屋の物よりは狭くなっているけれど……。

 まあ、そのうち慣れるでしょう。

 慣れないようならどぎつい色をパステルカラーにして色の印象を和らげるようにすれば多少はマシにするといった対応を行う必要がありそうね。


 さて、今はシオミセイラをどうにかして一人前の聖女にするかを考える必要があるわね。


 ……一人前の聖女の定義ははっきりとはさせていないけれど。

 第一、あのような性格ではリカ様とそっくりそのままの人間にはならないでしょう。

 彼女の性格を考慮した上でどのように一人前の聖女にさせていくかが重要よね。

 まずは最低限、聖結界の魔石に魔力を込められるようにする。

 それだけは大前提。

 でも、日本から来た上に、あの金色の瞳をしているならすぐに達成できる目標でしょう。


 次、聖女の騎士並びに婚約者であるオズワルド殿下との交流。

 それだけはなんとしてでもさせないといけない。


 聖女の筆頭騎士であるヘイヴルは説明役ぐらいはしてくれているけれど、それ以外の聖女の騎士、そしてオズワルド殿下との交流がない。

 これはよろしくないでしょう。

 巡礼の旅の途中、彼らはシオミセイラと交流は取れるのかしら?


 そのためには私がなるべくシオミセイラとは別行動する必要がありそうね。

 私がいなければ自然と別の者と交流を取らざるを得ないでしょう。

 なるべく満遍なく関わらせるか、偏らせるか……。

 ……関わらせやすい者を考えましょう。

 良くも悪くも癖はある人達だから関わらせやすい人とシオミセイラを接触させて試すのはありよね。


 まず、関わらせやすいと言えばヨルペルサス。

 彼は先ほどシオミセイラに自分の武器を紹介していたし、シオミセイラと関わる気はありそうだもの。

 最初はシオミセイラの背の高さに怯えていたようだけれど、それを今は気にしていないみたい。

 なら、大丈夫そうよね。


 次にクロードね。

 彼なら物腰は柔らかい方だしシオミセイラとも上手くやってくれるでしょう。

 王宮騎士の人にも仲の良い人がいるとのことだし、満遍なくコミュニケーションが取れるタイプね。


 次にマイロス。

 彼は大らかな人だから声が大きいことを除けば関わりやすいタイプよね。

 問題は寝坊をしがちなのと食い意地が張っていて他人の食べ物を奪おうとするところだけれど……。

 まあ、なんとかなるでしょう。


 次にへイヴル。

 ……説明役は買って出てくれるけれど、明らかに私と対応が異なっているのよね。

 シオミセイラをどこか突き放すような感じもしているような気もする。

 その対応に関してはまあ、私もやってはいるけれど……。

 私の場合はシオミセイラに依存されないようにやっているけれど、ヘイヴルにその対応をされると困るのよね。

 聖女の筆頭騎士が真の聖女にそのような関わり方をして良い訳がないわ。

 個人的に話してみようかしら?


 次にエドガー。

 彼は寡黙過ぎるのよね……。

 そもそも喋る気が無い。

 戦いは率先としてやってはくれるけれど、それ以外のことは特にしない。

 ……聖女の騎士の像ではどうしてあの流れに乗っていたかはわからないけれど、聖女の騎士同士では仲良くしているということでしょう。


 最後に問題のオズワルド殿下。

 ……私に求婚してきた辺り、私との関係性で拗れている可能性がある。

 シオミセイラとなんとかしてほしいところだけれど、いつになく感情が無だ。

 私の知らないところで何かあったのかもしれないけれど……。

 打ち解けさえすればちゃんと話せる相手だからシオミセイラの努力次第ね……。


 こうなってくると、ヨルペルサスとクロードとなるべく組ませられそうな流れに持っていけたら良いのかしら?

 まあ、道中の町で私がこっそりはぐれればコミュニケーションを取らざるを得ない機会は訪れるはずよ。

 ただ、はぐれ過ぎても迷惑も良いところなのよね……。

 悩みどころが多すぎるわ。


 魔物との戦闘は……。

 リカ様と使える力が同じなら確実に私がいらなくなるのよね。

 ……あの双剣、マイロス以外の彼らの前で見せるのは少し躊躇われるけれど、使うしかないわね。

 光の魔力は魔物によく効くもの。

 使わない手はないわ。


 最終的には私という人間がいらなくなるというのはどう考えてもわかることなんだから、シオミセイラにはなんとしてでもこの世界に愛着を持って聖女として勤めてもらわなくてはならない。

 ……そういえば彼女、元の世界に帰りたいとは思っていないのかしら?

 家庭の事情に踏み込む可能性もあるけれど、一度聞いてみないと。

 ……かといって私と仲が良くなり過ぎるのは良くないのよね。

 ここは、自分から言い出して私以外の誰かに慰めてもらう、そんなことが起きる事を願おう。

 弱音を吐く相手がいるのなら十分にコミュニケーションを取っても良い相手だということだし、問題ないはず。


 さて、明日から巡礼の旅が始まるわけだけれど、シオミセイラは立派な聖女になれるのかしら?

 それだけが心配なのよね……。


 そういえば、シオミセイラはちゃんと眠れているのかしら?

 この塔では5の刻、日本で言うところの朝の5時が起床時間なのだけれど……。

 まあ、良いでしょう。

 明日になればなんとかなることよね。

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