第11話 真の聖女の住まい探索

「あ~もう! どんだけ高いのこの塔! 結局住むことができる場所は下の階層にもあるし! なんでかごはんを食べる場所もめちゃ高いところにあるし! 下から行き来するのに足痛くなるよ!? すでに痛いし!」

「聖女様、申し訳ありませんが慣れてください」

「慣れないといけないの!?」


 シオミセイラは聖女の塔の構造に怒鳴っている。

 10階建ての建物でここはダイニングのような場所の8階だから後少しで聖女の部屋がある最上階に辿り着くのだけれど……、シオミセイラはあまり運動をしてこなかったのかもう限界のようだ。


「とりあえず休憩よ!」


 シオミセイラは近くの椅子に座った。

 疲れた状態で座ると中々離れられなくなりそうだけれど……。


「あっ、そうだ! マリーヴィア先輩! 最上階ってあとどれくらいですか?」

「後2回、階段を上れば辿り着けますね」

「後2回ですかぁ〜……」

「ですので、もうすぐですよ」

「もうすぐと言われましても〜……」


 根が張ってしまったようだ。

 これはしばらくしないと上には上れなさそうね。

 部屋の掃除をしようと思ったのだけれど……。


「……ところで! マリーヴィア先輩って何歳ですか? あたし、高校1年の16歳です!」

「私は昨日で15歳になりました」

「15歳!? その小ささでですか!?」


 ……小さいのは事実だけれど、思いっきり指摘されるのは心に痛い。

 鏡で見ればわかるけれど、私は小学生に見えるくらいの体格なのよね……。


「聖女様、マリーヴィア様に失礼ですよ。マリーヴィア様は1歳にもならない頃から聖女としての務めを果たされていた方です。見た目で全てを判断されぬように」

「えっ、1歳にもならない頃って実質赤ちゃんですよね!? そんな年から……。この異世界、ハード過ぎる!」


 聖女として認定されたのがそのくらいの頃で、段階を積んで聖女としての務めを果たせるようになってきたのだけれど……。

 この説明をしても無意味ね。

 やめておきましょう。


「後2回階段を上ればいいのはわかったけどまだ休みた〜い! ……そういえばみんなって何歳なの? 年を言うならあたし、マリーヴィア先輩以外の名前わかんないから名乗ってね」

「へイヴル=フレイ=ファロンディアです。今年で18歳になります」

「マイロス=デモンドルト! 今は23だ!」

「ヨルペルサス=サタナリアです……。16歳です」

「クロード=ルガート。20歳ですね」

「エドガー=ニィラー。19だ。」

「オズワルド=レコストル=ヘンデルヴァニア、……21」

「ライズ=タキガルマだ。34歳だな」

「……マリーヴィア先輩とヨルペルサスくん以外あたしより年上じゃん! 老けてる〜」


 ……随分失礼な感想を言うのね。

 この国では恵実の季、地球で言うなら春が1年の始まりだ。

 この中で一番誕生日が早いのは私で私は恵実の季の2日生まれで他の皆は厳暑の季、夏生まれだったり、山恵の季、秋生まれだったり、厳寒の季、冬生まれだったりする。


 ヘイヴルは今年で18歳になるとは言ったけれど今は誕生日を迎えていないので17歳だ。

 こんなに若いのによく聖女の筆頭騎士になったものだとは思うけれど、幼い頃から魔物討伐を行い、それで勲章をもらう程の努力を重ねてきたからここまでの地位になったのだろう。


 ヘイヴルが聖女の騎士になったのは12歳、聖女の筆頭騎士になったのは14歳だ。

 そう考えるとだいぶ出世をしている方なのかもしれない。


 聖女の筆頭騎士になった段階で子爵位も国王陛下から賜っているという話だし……。


 平民としてはだいぶ地位が高い。

 ……とは言っても、聖女の筆頭騎士になった時点でこれ以上の出世はできないけれど。


「ん〜、じゃあ、最上階! 行くか〜! 休憩終わり!」


 シオミセイラの休憩も終わったので上の階に上がる事にした。

 ……私は聖女の部屋に立ち寄るべきではなさそうだから1つ上の階で待っておきましょうか。









 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇









「あれ? どうしてへイヴルさん以外の人、ついてこないの? マリーヴィア先輩は!?」

「私は聖女の部屋に入るわけにはいかないので……」

「マリーヴィア、あの部屋に置き忘れたものはないのかい?」

「ないです。入っていただいて問題ございません」


 ……あの部屋、ベッド以外なんにもないのよね。

 必要な物は圧縮鞄の中に入れているから問題はない。

 ただ、ものに溢れている地球の現代人から見たらあまりにも殺風景過ぎて驚かれてしまいそうな気がする。

 もう遅いのだけれど……。


「……あれ? マリーヴィア先輩は昨日までどこで寝ていたんですか?」

「聖女の部屋でしたが、どうかしましたか?」

「ベッドとかって朝起きた時そのままですか!?」

「いえ、水の魔力で洗浄しました」

「……残念ですぅ」


 シオミセイラはどうしてがっかりしているのだろう?

 本来だったら新しい寝具を用意するのが筋ではあるけれど緊急で買いに行くことなど不可能なのでひとまずは洗って応急処置をした。

 これが正しいのよね?


「それでは聖女様、お部屋に案内いたします」

「マリーヴィア先輩が住んでいた部屋、どんなか……、なっ!!?」


 機嫌が良さそうに聖女の部屋に突撃していったけれど、やはり驚かせてしまったようだ。


「ななななななな、なんで!? なんで真っ白くてでっかいベッドしかないんですか!!? 可愛い小物は? 小さいお洋服は!?」

「マリーヴィア様はそのようなものをお求めになりませんでしたので」

「う、うゔぅ! あたしが買ってあげますからね! マリーヴィア先輩!」


 ……私に何を期待しているのかはわからないけれど、可愛い小物だとか無意味な服を買い求める趣味は私にない。

 それにシオミセイラは現状無一文のはず。

 お金は後々巡礼の旅で手に入れるか、予算を管理しているヘイヴルに頼んでおこづかいになるような額を貰うかで工面してもらう必要があるだろう。


「マリーヴィア様、今のうちにお部屋を確保しませんか?」

「そうですね。空き部屋を掃除しなくては」


 シオミセイラの反応はこれ以上聞く必要はないでしょう。

 ひとまず私はヨルペルサスの進言に従って部屋を確保することにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る