第15話 あなたヘイズでしょ?

やっと学校が終わり、俺はカバンを持って教室を出た。

そして、学校の玄関前で掃除当番のユイを待つ。


その時、背後から透き通った聞き覚えのある声で話しかけられる。


「霧島タツキ。あなた、ヘイズでしょ」

「へ?」


そこには、夜雲ミナミが立っていた。


その声色は確信に満ちていた。

まるで、俺がヘイズである根拠を持っているかのように。


「なんで、そう思う?」


俺はミナミに問う。


ミナミの真っ直ぐな視線。


「まず、上村丘高校の体罰事件が解決されたのが何よりの証拠。そして、その怪しいマークがついている黒く光る腕時計そんな腕時計見たことない。それが証拠」

「ったく。そんな、薄っぺらい証拠で俺を怪物扱いするなよな。第一この腕時計は俺がデパートで買ったもんだ。じゃあな」


その場から離れようとする、俺にミナミは一言放った。


「私が、あなたの監視役兼スーツのメンテナンス担当になったからよろしく」


は?

空気が凍りついた。

何言ってんだコイツ?

もしかして、こいつ本当に俺の正体分かるのか?


「スーツ?メンテナンス?なんの事だ?」

「あなた、水族館でイルカのプールに入ってスーツが水浸しのはず…」


何でそれを!?

プールから男の子を助けたのは俺しか知らないはず…。


「夜雲ミナミ、何で俺の正体が分かるんだ?」

「私は、スーツ持ち主からあなたの監視とメンテナンスを頼まれたから…」

「朝比奈っていうおっさんにか!?」

「そう、だから転校してきたの。今日からよろしく霧島さん」

「ああ、色んな意味でよろしくな。ていうかじゃあお前さっきのあれ芝居か?」

「ええ、もちろん」

「お前………超性格悪いな!!」


□□□


翌朝。


「おはよ、タツキ」

「おはよー」


俺はあくび混じりにユイにそう返した。


「相変わらず、眠そうね」

「しゃーねーだろ、朝弱いんだから」


俺はそう言って、いつも通り朝食が用意されているダイニングの椅子に腰を下ろす。


ユイもトーストを焼き終え腰を下ろす。

しかし、どこか不機嫌そうな眉だった。


「何か、昨日の放課後夜雲さんと妙に親しく話してなかった?」

「え、別に…」


あいつとの関係がバレたら俺の正体もバレかねないから適当にはぐらかすか…。


「昨日、学校の玄関で二人で何やら怪しげに話してたの遠目で見てたんだから!」

「見てたのかよ…」

「別に気にしてないけど…」


めっちゃ気にしてる表情じゃねーか!


「ただ、タツキが変なことに巻き込まれてないか心配なだけ」


その言葉には、純粋な優しさがあった。


ユイ…。

すまないな…。

俺の正体を打ち明けたいけど、お前にだけは言えないんだ…。


「ほら、学校行くぞ」

「うん…」

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