第14話 謎の転校生
ホームルーム前。
教室に響く担任の声とともに、静まり返るクラス。
「今日から新しいクラスメイトが来ます。じゃあ、
ガラリと教室のドアが開く。
長い黒髪に制服はちゃきっと着こなしは完璧。
けれどその瞳はどこか冷たく、クラス全体を値踏みするような視線だ。
「夜雲ミナミです。よろしくお願いします」
声は澄んでいて落ち着いていた。
無駄のない所作と整った顔立ちにクラスがざわつく。
「めっちゃ美人じゃね?」
「でも、ちょっと近寄りがたい雰囲気…」
周囲の反応に無関心なまま、ミナミは担任に促され空席の俺の隣に座った。
「確か霧島さんよね、よろしく」
静かな声が、隣から聞こえる。
俺は、少し驚きながらも挨拶を返した。
「ああ、よろしく」
普通の自己紹介だけど何か引っかかるな。
何で、あいつ最初から俺の名前分かるんだ?
その視線は、明らかに俺を見透かすようだった。
□□□
昼休み、お弁当を食べ終わったユイが俺の席にやってくる。
「ねぇ、タツキ。あの子の事気になる?」
「は?誰のことだよ」
「転校してきた夜雲さんのことだよ!何か、すごい睨んでたからタツキのこと。何かあったのかなーって」
「俺、睨まれてたのか?何も知らないが」
「そうなんだ、じゃあ私の気のせいだね」
ユイと笑いながらそう話しているとミナミ、そう本人の登場だ。
「ひとつ聞いてもいい?」
ミナミが無表情のまま、俺の机に手をつく。
「ヘイズって、知ってる?」
ギクッ!
コイツも、俺の話題か!
どいつもこいつも心臓に悪いな…。
唐突な単語に、ユイと俺の動きが止まった。
「え?あの噂の黒スーツのヒーローの?」とユイが言う。
「そう。カッコいいよね、ヘイズ。正義を貫いてて」
ミナミは一瞬だけ、笑った気がした。
「だよね!夜雲さん!私もヘイズかっこいいと思う」
ユイがそう返答する。
(ったくどいつもいつも俺を話題にしやがって。強引に犯罪者をぶっ倒してる姿のどこに惹かれるのやら…)
「月嶋さんもそう思う?じゃあ、ヘイズの正体気になるよね」
ギクッ!
ミナミは、ユイと会話しているはずなのに明らかに俺の方を向いてそう言った。
「うん、気になる。きっと、正体は優しくて、頭がいいイケメンの20代とかじゃない?」
ユイは笑いながらそう言った。
「いや、意外に寝癖があってだらしのない、高校生かもしれないよ」
また、こいつ俺の方を見て言いやがった!
まさか、こいつ!?
まさかな…。
ただの女子高生が、俺の正体を知ってるはずないわな。
「何それ!だったらおもしろーい。まるで、タツキみたいじゃん」
ユイ!
お前、今それ言うか!
適当なこと言って逃げるか。
「ああ、確かに俺はだらしねーよ!でも、俺はそんな暴力怪物じゃねーよ。じゃあな、自販機でジュース買ってくる」
俺は、その場から逃げた。
まったく、あいつらは俺の気も知らないで好き勝手言いやがって。
でも、夜雲ミナミか…。
鋭そうなやつだな。
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