第16話 スーツのメンテナンス
昼休み
俺は、昼飯を食べ終えて適当にスマホニュースを見ているとヘイズのニュースでいっぱいだった。
『ヘイズに恋するヘイズ女子急増中!』
『ヘイズのファンが語る!ヘイズの正体とは!?』
ヘイズファンにヘイズ女子かー。
悪くないなー!!
「何にやけてんだ霧島」
「はい!?」
急に話しかけられて、変な声を出してしまう。
声の主は、野球部の佐藤だった。
佐藤が、俺のスマホ覗き込む。
「お前、何ヘイズのニュース見て鼻の下伸ばしてんだよ」
「う、うるせぇ。何だっていいだろ!て言うか、勝手にスマホ見んなよ!」
「すまんすまん」
佐藤は適当にヘラヘラしながら謝罪をする。
そして、佐藤は続け様に話し始める。
「俺らもヘイズに助けられたのかな?」
「俺らもって?」
「ほら、俺たち野球部の顧問武田の体罰が明るみになったじゃねーか。そのことだよ」
そういえば、俺が武田の音声テープ録ったんだったな。
「なるほどね。で、それとヘイズが何で関係するんだよ」
「ほら、ずっと噂になってたし何より佐伯の弟がヘイズを見たって言うんだよ!」
あのガキ…。
言いやがったな。
まあ、言うのも無理ないか…。
「なるほどね、本当に存在するのかねー。こんな黒スーツ」
俺は、適当にはぐらかす。
「俺はただ…ヘイズに感謝したい。今、武田はいなくなって平和に部活ができる。だから、めちゃくちゃ上達したんだぜ俺たち!」
目の前の俺がヘイズだ!
感謝しろ!
とは言えないからな…。
でも、身近な人に感謝の気持ちがあると嬉しいな。
「まあ、上達したなら全国高校野球大会にでも出場が決まればヘイズも喜ぶんじゃね?」
「それだよ!!!」
佐藤は、俺の机をドンと叩く。
「何だよ」
「俺たちが、全国大会に出場すればヘイズも知ってくれて恩返し出来るはずだ!俺ら、今地区予選で次準決勝なんだよ!だからもう少しだぜ!」
もう、お前らのことは知ってるよ。
せっかく武田いなくなったんだから俺のことなんて忘れてのびのびとプレーすればいいのにな。
「すげーじゃん!あともう少しだな!」
「おう!そうだ!俺たちが決勝まで行ったらお前も見にこいよ!月嶋さんと一緒にな!」
「うるせー!一言余計だ!でも、決勝までいったら見にいくよ。何たって決勝の会場は今年開業したスカイアイビスだもんな!最新型の屋根開閉式ドーム!開閉した形はまるで飛び立つトキのような形!そして、温泉付きの複合ドーム!行くしかないだろ!!」
「霧島…お前やけに詳しいな…。しかも、お前その話し方だと俺たちの試合よりスカイアイビス目当てじゃねーか!」
バレてたか…。
「いや、お前らの試合の方が気になるに決まってんだろ!スカイアイビスはおまけ!」
「なら、よかった。俺たち頑張るから来いよ!」
そう言って佐藤は拳を掲げる。
「おう!頑張れよ」
佐藤と話し終え再びスマホを見るととあるニュースが目についた。
『空き巣、強盗被害増加中!犯人の多くは若者。闇バイトか?』
強盗に、闇バイトね…。
本当に物騒な世の中だぜ…。
ニュースを見ていると、スマホに一件の通知。
『放課後、教室に残ってて』
□□□
放課後
「タツキー!帰ろ!」
バッグを持って、そう話しかけてくるのは顔を見飽きている幼馴染のユイ。
「悪い!今日友達と帰るから先帰っててくれ!お前の、ゴツゴツのジャガイモが入ってるシチュー楽しみにしてるぜ!」
「何よ!ゴツゴツって!もういい!」
ユイは、プンプンと怒りながら教室を出て行った。
悪いな…ユイ。
「あ、ちゃんといる」
誰もいない教室のドアがガラガラと開き昼間のメッセージの主が入ってくる。
「いや、残ってて言われたらいるだろ。何だよ、ミナミ」
そう、声の主は夜雲ミナミ。
俺の、監視役件スーツのメンテナンス担当と名乗る人物だ。
「今日は、スーツのメンテナンスするだけ。あなたの、スーツちょっとボロボロなってきたでしょ」
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