第11話 ヒーローは休日も忙しい
警察、もうそんなところまで特定してるのかよ!
やばいな。
ていうかあの時俺、感情的になって変身解いちゃったよ。
その少年が、俺の顔覚えてたり、会ったりしたら終わりだな…。
「お、おじさん。ヘイズが高校生というのは少し暴論じゃないですか?仮に高校生だったら、あの身体能力とかあの変なスーツとかどう説明するんですか?」
「そうだよなあ。でも、俺は高校生だと思っている。もしかしたら、ヘイズの正体は君かもなタツキくん」
や、やべー!!
俺、バレてんのか?
泳がされてんのか?
冷や汗がダラダラと垂れる。
「なんて、冗談だよ。君がヘイズなわけないよなタツキくん。今日は、ユイを頼んだよ」
「わ、わかりました…」
冗談になってねーよおじさん。
流石、警視庁刑事部長だ…。
勘が鋭い。
「タツキじゃあ出かけよ」
俺が、冷や汗をかいてる間にユイは出かける準備をしたようだ。
「そ、そうだな。おせーよまったく」
「しょうがないじゃん、洗い物あったんだから。じゃあ、お父さんお留守番よろしくね」
「おう、いってらっしゃい。暗くなる前に帰るんだぞ」
ユイの親父はニコニコと手を振って俺たちを見送った。
その笑顔に何か裏がありそうで怖かった。
ユイは、制服と家着とはまた違ったラフな私服姿だ。
白いワンピースに帽子という珍しくシャレた服装。
「似合ってる…」
「え、なに急に!?」
「あー、だからいつもの服装とは違って新鮮だって言ってるんだよ」
「そ、そう…ありがと」
いつも、噛み付いてくるような態度だが今日のユイは珍しくおとなしい。
「クラゲのコーナー、すっごく人気らしいよ!映えスポットらしい!」
「映えってなんだよ。ユイが使うとちょっと新鮮だな」
俺は、笑いながらそう返答した。
「映えって言葉ぐらい使うし!早く水族館に入ろ!今日は、タツキに楽しんでほしい…」
ユイ…。
最後に見せた、その表情の奥には悲しさ、不安さ、心配のような感情がたくさん入っているのだろう。
少し、考え込んでるような表情だしな…。
こりゃ、心配かけてるな…。
「何ボーッとしてんだよ!ほら、行くぞ!楽しんでほしいんだろ」
俺はそう言って、ユイの手を引き水族館に入った。
ユイとこうやって、二人で歩くの久しぶりだな。
「こうやって二人で歩くの、久しぶりだねタツキ!」
「お、おう…」
コイツも、同じこと思ってたか。
両親が亡くなって、彼女に振られて、ぐちゃぐちゃになった俺の日常。
でも、そんな中にユイとの時間という大切なものがあることに最近俺は気がついた。
館内は、家族連れやカップルが多く賑わっていた。
クラゲコーナーに、サメの巨大水槽、よくわからない謎の魚…。
何気ない会話をしながらも、ふとした瞬間にユイが俺をじっと見るのに気づく。
「なんだよ」
「んー…最近、タツキちょっと雰囲気変わったから。前より大人しいというか…?なんというか…?」
やっぱり俺、変わったのかな?
「俺は、いつも通り元気だぜ!」
「そうなのかな…。気のせいかもしれないけど、タツキ夜外出歩いてない?」
「……っ!」
なんで、こいつ俺が夜部屋にいないこと知ってんだ!?
ユイが寝てから、ヒーロー活動してるからアリバイは完璧なはず!
ヤバい…!
「いや、ほら考え事が多くて寝れない日があるんだよ。だから、夜の散歩とかしてんだよ」
うまく誤魔化せたか?
「そうなんだ…。だから、たまに夜中トイレに起きた時部屋から物音しないんだね。でも、考え事って何?悩み事?」
まずい。
今度は、また別の心配させてしまった…。
悩みは、ないと言えば嘘になる。
ヘイズの活動のこと、失恋のこと色々ある。
でも、ユイにはヘイズ活動に巻き込みたくない。
「女には、分からない男の悩みってものがあるんだよ!」
「あ、そっか。ごめんね。なんか疑って」
「いや、いいよ。心配してくれてありがとな」
ユイ…もしや俺がヘイズだってこと疑ってんのか?
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