第10話 ユイのキモチ


「ただいま…」

「おっそーい!何時だと思ってるの?」


仁王立ちで、玄関に待ち伏せしているユイ。


「悪い、悪い隣町の本屋行ってたらつい夢中になって…」

「まあいいや。ご飯できてるよ」


夕飯は、ユイが作ったカレーだった。


「おお、美味そうじゃん。そういや、おじさんは?」

「お父さんなら、なんか少年が自首したかなんとかで遅くなるって」


そうか…。

まあ、俺が自首させたんだけどな…。


「おお今日のカレー美味いじゃん!」

「何よ。その、いつもはまずいみたいな言い方」

「いやいや、そんなつもりで言ったわけじゃないんだけどな…。なんだよ、今日はやけにイラついてるな」


ユイが真剣な表情になる。


「お父さんも仕事で、タツキも帰るの遅かったから一人で寂しかったの…。ごめん」


ユイ…。


「よーし。じゃあ、来週の週末はお出かけだな!」

「タツキ…!」


ユイにいつもの笑顔が戻った。


「しかし、相変わらずじゃがいもはゴツゴツしてるな!」

「うるさいな!」


□□□


後日。

もう、動画サイトに怪しい動画がアップロードされることはなかった。

それと、14歳の少年は警察に自首したというニュースが入ってきた。


代わりにネットでは、噂が拡散されていた。


「また、ヘイズが事件を解決した!」

「黒スーツがまた動いた!」

「警察より頼りになる!良い抑止力だ!」


SNSはヘイズの話題で持ちきりだった。


「おーい起きろー!タツキー!」


なんだよ。朝からうるせーな。

声の主は、ユイ。

日曜なのに朝から元気なやつだ。


「おはよう、ユイ、おじさん」


ダイニングに行くと、いつものようにトーストと目玉焼きがテーブルの上に用意されていた。


そして、ユイの親父も仕事が休みなようでのんびりしていた。


「おお、タツキくん。起きたか。日曜だからといってリズムを崩しちゃだめだよ」

「はーい」


俺は、あくびまじりにそう返事をした。


「もう、タツキはいつも眠そうなんだから」


ユイは、コーヒーを飲みながら一言。


「うるせーなー。昨日ちょっと夜更かししちゃってさ」

「なんで、夜更かししてたの?」

「勉強だよ。勉強!数学の小テストの点数が悪くてな…。夜遅くまで勉強してたわけ」


正直に、夜中ヒーロー活動してましたなんて言えないよな。


「あはは、タツキは昔から数学苦手だもんね」

「うるせぇ」


ユイと一悶着あったが俺は、トーストを食べ終わりコーヒーを飲みながらゆっくりとテレビを見ていた。


すると、もじもじしながらユイは話しかけてくる。


「ねえ、タツキ…今日の約束ちゃんと覚えてる?」

「ああ、お前の行きたかった水族館に行くんだろ。ちゃんと覚えてるよ」

「タツキ!」


その後、ユイはルンルン気分で食器洗いをしていた。


「なあ、タツキくん」


新聞を読んでいた、ユイの親父に呼ばれる。


「どうしました?」

「お前たち、今日水族館に行くんだろう。最近物騒だから、ユイのことを頼んだよ」

「そんな、心配しなくても大丈夫ですよ。おじさん」


俺は、不安そうな顔をしているユイの親父を宥めた。


「しかし、最近物騒な少年事件もあったしな、なによりヘイズとかいうふざけたスーツの奴がうろついてる。十分注意してくれ」


その、ふざけたスーツの奴はあなたの目の前にいる僕ですとは言えないな。


「そういえば、おじさんスーツのやつはおいといて少年事件の方はどうなったんですか?」

「ああ、その件だが別の課の刑事に聞いてみたら妙なことをその少年が言ってたみたいでな、高校生ぐらいの男に自首を促されたらしいんだ。夢かと思ったけど、妙に納得してしまったらしい。我々、警察もその高校生に会って感謝を述べたいところだ」


今、絶賛会って話してます!

その、高校生僕です!

と、言いたいところだがヒーローたるもの心にしまっておこう。


「へ、へえー世の中には危険を顧みない善人な高校生もいるもんですねおじさん」

「ああ、話の本番はここからだ。その現場の近くで、例のヘイズも目撃されたらしくてな、その高校生とヘイズは同一人物じゃないかと俺は睨んでいる。つまり、ヘイズは高校生だ!タツキくん、君はどう思う?」


嘘だろ!?

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