第4話 SNSで繋がった朝、バレた俺の“投稿”

「あのさ、Xやってる?」


電車の中、彼女が突然そう聞いてきた。


「え、X?」


「Twitterって言ってたやつ。今はXじゃん?」


「あぁ、やってるにはやってるけど…何で?」


「んー、なんか気になって。

あんた、絶対なんか書いてるでしょ。“ギャルと通勤電車”とか(笑)」


ズバリすぎて思わず吹いた。


「いや、え、なんでそう思うの?」


「感覚。あと、私っぽい話がバズってたんだよね。

“通勤電車で見かけたとんでもないギャルの話”とか」


完全に俺の投稿だった。


アカウントは鍵もつけずに、趣味でゆるくやってただけ。

あの出会いの衝撃が忘れられなくて、つい物語っぽく投稿してたやつ。


「ちょ、もしかして読んだ…?」


「うん。てか、あれ、私だよね?」


「…………ごめん」


正直、めちゃくちゃ焦った。

勝手にネタにしてたし、怒られても仕方ないと思った。


でも彼女は、不思議そうな顔で笑った。


「意外と文才あるじゃん」


「え…怒ってないの?」


「まぁ、ちょっとだけ。でも正直、面白かった。

自分のこと第三者目線で読むの、新鮮だし。

てか、なんか丁寧に見てくれてる感じした」


その言葉に少し救われた気がした。


「じゃあさ、フォローしとくね? DMで話そ」


そのまま、彼女のアカウントが通知に表示された。


プロフィールは適当だけど、投稿は推しの話とガチャ報告で埋まっていた。

“ギャルなのに”っていう俺の偏見は、またひとつ崩れた。


「てか、勝手に“とんでもないギャル”とか書いて…次書くときは許可とってね?」


そう言って、彼女は小さく笑った。


電車が駅に着く。

彼女はいつも通り一歩先に降りながら、振り返ってウィンクした。


画面を見ると、DMに「朝、ありがとう」ってメッセージが届いていた。


“X”で繋がった世界。

物語は、フィクションじゃなくなってきた。

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