第Ⅰ章 第12話

私は翠桜様と桜華を見送った。


「徠華様、何方に向かうのですか?」

そう私に聞いたのは私の宝石執事の一人・ヒスイだ。


「私は私のやるべき事をしに行くんだよ」

私は離れから少し離れた本邸の方に向かった。


私は朝、この本邸に訪れた。

その時は、黒柳家の双子の姉妹・黒柳香凜と黒柳香蓮に邪魔をされて、翠桜様の傍に居る事も私の兄である蒼華の依頼を着手出来なかった。



・・・それにしても・・・何故、蒼華兄さんは私にあの依頼を・・・?



私に兄である蒼華から黒柳家に探りを入れる様に依頼されたのは、昨日の夜、呼び出されて蒼華兄さんから直々に依頼された事だ。


蒼華兄さんはずっと翠桜様の両親の死の理由が引っ掛かかっていたらしい。

それで、私に調査を依頼したらしい。


元々、翠桜様のお父様の櫻樹知翠(さくらぎ・ちあき)様はこの黒柳家で今の翠桜様の様に虐げられ育った人だ。その娘である翠桜様にも彼等が虐げるだけの苦痛を彼等が与えるとも考えられないのだから。



すると「・・・首尾は如何だ?」

本邸を歩いているとある部屋からそう声が聞こえた。


「問題は無いですよ、香綺さん。


彼女は何の疑いも持っていませんでしたから」

そう答えたのはまた別の声だが、聞き間違える事は無かった。

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