第10話 来客②
志保さんは話し合いが終わったあと大学の課題が残っているらしく「やばい!忘れてたー!」と苦しそうな声を出しながらやっている。
「課題か...」
高校か、まだそれほど休んではいないけど学校から親には連絡が言ってるだろう、まぁあの人は適当に理由をつけて特に気にしてないだろうな、小さい喫茶店のバイトも実はやってたんだけどあの日に「いきなりですいません、バイトやめます」の一言だけを一方的に伝えて辞めてしまった。
自殺するつもりだったからもういいかと思ったけど今こうして生きている以上1度謝りに行きたい、店長は何を考えているかわからない人だったけどいい人であったのは間違いないし。
「謝りに行こう...」
今は朝10時だ、俺がバイトしてたカフェは個人経営で開店時間が遅いので今行けば開店前には会えると思う、志保さんに「少し外出てきます、昼過ぎまでには戻ります」と伝え昨日買った私服に着替えると
「そういえば昨日私服買ったのに疲れすぎて見せてもらうの忘れてた!すごい似合ってる!私の莉央くんがこれ以上可愛くなったらどうしよう...」
そこはカッコイイって言って欲しかった、そういえば高校の友達にも似たようなこと言われたけど自分ではあんまりそうは思えないな
「ありがとうごさいます、志保さんの私服も楽しみにしてますね」
「うん!けどいつかは莉央くんが選んでくれた服着たいな...莉央くん色に染めて欲しい...」
顔を赤くしながらかなり凄いこと言ってるなこの人、けど気に入って貰えたみたいでよかった、その後ハグを志保さんに求められ結局15分くらい離れてくれなかった、最終的に課題終わらなくなりますよと言うと渋々離れて貰えた。
「ちょっと怖いな」
急にバイトやめた人が来たらさすがにあの人も怒るだろうな、けどやっぱり一言でもいいから謝りたい。
歩いて30分くらいかやっと目的地についた、深呼吸をして扉をあける。
「ごめんなさい、まだ開店前なんですけ...」
「高橋くん...」
「この前はいきなりやめるなんて言ってすいませんでした、どうしても謝罪したくて..」
「ここ、座って?」
店長はカウンター席を指さして座るように言ってきた、怒鳴られる覚悟は出来てる、けどやっぱり怖いな。
恐る恐る席に着くと
「大丈夫そう?」
店長はただ一言だけ返してきた、「大丈夫そう?」どういう意味だ、心配してくれてるのか?店長は俺の不思議がっている顔を見たのか続けて
「何かあったんでしょ?」
「はい、まぁその色々と...」
「あの時の高橋君の声すごい震えていたからあの後なんども電話掛けたんだよ?」
「ごめんなさいあの後スマホ無くしちゃって...」
「何も無くて良かった...心配して私高橋君のお家までいったんだからね?誰もいなかったみたいだけど」
「わざわざすいません...」
「いいのよ、けど本気で心配したから何かあったら相談するのよ?」
「はい」
「けどバイトはやっぱり辞めちゃう?」
「こんなに迷惑かけてるのにこのまま働かせてもらうのは...」
「じゃあ責任取って?」
「え?」
「だから責任取ってこれからもここで働いてほしい」
「いいんですか?」
「いいのよ、だから何かあったら相談すること約束だよ?」
「ありがとうございます...」
「と言ってもいきなり復帰させるのも可哀想だしスマホもないってなるとどうしようかな」
「買うつもりまだないのでしばらく無いと思ってて欲しいです...」
「まじか...」
最終的にはスマホ買ってから復帰という形に落ち着いた、その後は少し雑談を店長としたけど前よりも距離感が近くなった気がする、けど調子に乗るとまた刺されるので特に変なことは言わなかったと思う。
「じゃあ今日はこれで失礼します」
「うん、また今度ね楽しみに待ってる」
「はい」
帰り際の何気ない一言だったが俺は店長が笑っている所を初めて見た。
「あの人笑うんだ」
「おい」
まずい、聞かれてた「ごめんなさいー」と言ってその場を後にする。
今日はちゃんと謝罪できて良かった、店長にも頭あがらないな
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