2.海に救われたPart4

「ここにない本は無いですよ。古今東西の図鑑から絵本、小説に至るまで揃えてありますからね。」

 これが、この村唯一の図書館の司書さんの口癖だった。

 それを思い出して僕は図書館に訪れた。虹色の魚について何かわかるかもしれない。

 図書館に足を運んだが、出かけているのかそこに司書さんの姿はなかった。

 図書館は開いていたので、僕は置いてある魚図鑑をすべて読んだ。でも、虹色の魚についてはどこにも書かれていなかった。

 魚図鑑を片付けていると、村についての伝承が書かれてた少しだけ古い本を見つけた。どうせ暇だから読んでみることにした。

 伝承についての本を読んでいるとそこには、虹色の魚について載っていた。

 虹色の魚の本当の名前は「虹宿魚こうしゅくぎょ」らしい。

 虹宿魚は月が空の頂点に達した時にだけ、この村にある入り江に虹をその見に宿して現れるらしい。その入り江は、よく虹が見られることから「虹の入り江」と、呼ばれている。僕が自殺した場所だ。その他にも虹についての伝承も書かれていた。

 本を読み耽っているといつの間にか夜になっていたので、その日は図書館を後にした。司書さんは帰ってこなかった。

 図書館から出た僕は真っ直ぐ虹の入り江に向かった。

 僕はずっと入り江を眺めていた。月が綺麗に映る海面に終わりのない水平線、空を埋め尽くす星々と少し先にあるシルエットだけになった小島、全てが美しいとやっと気づいた。海だけじゃ、この景色は仕上がらない。

 死ぬ前の僕じゃ、気づかなかった。

 いつの間にか朝になっていた。平日ということもあってか、今日は人が少なかった。

 太陽光を乱反射する海に楽しそうに遊ぶ子供と溺れないか心配している親らしき人、夜とは違って無機質な岩肌が見える小島と雲一つない快晴の空、どれも綺麗だ。

 夕方になると、誰も居なくなった。夕日を浴びている海面と水平線と交差する夕日、段々と影がかっていく小島、どれもずっと見ていたい。

 僕が海を見ていると、後ろから司書さんが歩いてきた。

「ここに居ましたか。」

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