2.海に救われたPart1

「死は救いだ」

 中学二年生の春、僕はそう思った。

 どうせ誰も僕を愛していないし好きでもないから、死んだっていいだろう。心配する人が居ないのだから躊躇う必要もない。

 心残りは少しだけあるが、そんなことも「死んでしまおう」と考えてからどうでも良くなった。

 近頃は趣味だった読書にも身が入らなくなってきたり、不意に悲しくなったりしてしまう。夜寝ていても午前三時に起きてしまい食欲もなくなってきている。

 おそらく、「生きるのを辞めろ」という神様からのメッセージだろう。

 そして僕は、夏休み中に死ぬことを決意した。

 僕は遺書を書くことにした。せめて、最後ぐらいは、この気持ちをなんにでもいいからぶつけたかった。

 僕は数日掛けて遺書を二枚書いた。我ながらいい出来だと思いつつ封筒に入れた。

 そして、七月十八日が来て、夏休みになった。

 終業式中も後ろから叩かれたり殴られたりしたが、今日が最後だと思うと痛くなかった。

 終業式が終わり、家に帰る途中にこの村唯一の図書館に寄った。

 少し古臭くい木造建築で一階建ての図書館。でも、この村で一番大きな建物だ。たまに横に増築されている。

 僕はよくそこで本を読んでいた。図書館にはみんな気味悪がって来ないからだ。

 気味悪がる理由は、図書館が古くて不気味なのともう一つある。その図書館の司書さんだ。

 司書さんはいつも喋らず、ずっと静かに本を読んでいる、白くて長い髪の男性だった。髪のせいでよく顔が見えなかったことも覚えている。

 その容姿のせいで、みんな気味悪がって誰も図書館に近づかなかった。

 だけど、司書さんは近くで見るととても美しいと感じる容姿だった。透き通るような白い肌にルビー色のキラキラした瞳、高い花にうるおいを帯びた唇、スラッとした高い身長に腰まである白い髪、どこを取っても綺麗だった。

 そんな男性に、僕は恋をしている。叶わないと思っていても、全てに対して興味を失っても、司書さんへの恋心だけはずっと温かかった。

 司書さんは気味が悪くないと話しても、誰も信じてくれなかった。挙げ句の果には

「おいお前、あんな気味の悪いやつのこと好きになったのか?さすが、嫌われ者はお似合いだな。」

 なんて、クラスメイトに揶揄われた。

 でも、図書館に通うのだけはやめなかった。司書さんは、僕が図書館に行くといつも笑って迎えてくれた。図書館だけが僕の居場所だ。

 司書さんは本で読めない感じが出てきた時や意味がわからない言葉の意味、知っておくと為になる知識など色々なことを教えてくれた。

 そして、司書さんは少し変なことを言っていた。

「私、実は幽霊が見えるんですよ。」

 なんて、子供だましの嘘みたいなことだ。でも、そんな会話も楽しかった。

 僕は図書館から借りていた本を返して家に帰った。あそこにいると、死にたくないと思ってしまうからだ。昼ご飯を食べた後は二階に自室で昼寝をした。

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